2023.5.14
メンズ眉毛サロンへ潜入せよ! 眉毛ケアを通じて、おじさんは初めて人の心を知る
カウンセリングにて、理想の眉毛の形を聞かれたので、超極細眉毛じゃなければ、あとは店員さんの好みでお願いしますと一任する。
「じゃあ、坊主の人によく似合うキリっと眉毛にしましょうね」と、まずはワックス脱毛にて余分な毛をごっそりと抜いていく。「ちょっと痛いですよ」と前置きをしてからビリっと勢いよくテープを剥がす。うん、痛い。嘘は言わない女だな。やはり九州の女は信頼できる。
私の眉毛が剛毛ということもあり、脱毛を繰り返すうちに赤い血がじんわりと滲み出す。流血か、なんだか興奮してきたな。
続けて、眉の中に潜むクセッ毛をハサミで丁寧に間引いていく。「整えるだけじゃなくて描くことの楽しさも知って欲しいので」という店員さんのお勧めで、眉全体を覆うようにうっすらとアイメイクを施して無事に施術終了である。
記事が続きます
鏡に映った己の顔を見て、私は思わず感嘆の声を上げる。眉毛を少しイジるだけで顔の印象ってここまで変わるのか。自分がこんなに引き締まった表情ができるなんて今まで知らなかった。大満足だ。
店員さんにお礼を言って街へと飛び出す。生まれて初めてメガネを買ったときと同じような興奮、月並みな表現で申し訳ないのだが街が輝いて見えるとはこのことだ。
やばいやばい。眉毛を整えたぐらいで、おじさん、ちょっとはしゃぎ過ぎである。
急いで近くの富士そばに駆け込み、この世で一番阿呆で、そして一番美味しい食べ物として有名なカレーかつ丼を食す。そしてその後でパチンコ屋で不毛な玉遊びに興じるなど、とにかく俗にまみれることで、心の平穏を保とうと試みる。
だが、そのたびに気づいてしまう。富士そばにいる客の誰よりも、パチンコ屋の客の誰よりも、いや、もしかしたらこの街に生きる誰よりも、私の眉毛が格好良いってことに。
学校帰りの子供たち、カフェにたむろする若者たち、杖を突いて歩く年配者、疲れた顔したサラリーマン、お近づきになりたくない強面の男、女子高生、街ゆく人たちの眉毛が気になって仕方がない。見たい、もっと見たいんだ、もっといろんな眉毛をおじさんに見せてくれないか。
そうか、自分だけじゃなく、他人のことにも興味を持つことが美容を楽しむ醍醐味でもあるんだな。
記事が続きます