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衆院選投票率は微増の55.93%。選挙を盛り上げられなかった全政党と有権者は責任を感じてほしい

20年以上、国内外の選挙現場を取材し続けている開高健ノンフィクション賞作家・畠山理仁さんによる“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。 前回の第47回はスペシャル企画! その選挙戦を追い続けて16年。ついに実現した"選挙の鬼"中村喜四郎との初の対面インタビューを動画つきで。選挙前の取材ではありますが、選挙後のいま改めて観て読んでほしい回です。 そして今回はもちろん10/31(日)に投開票が行われた衆議院議員総選挙について。全国各地を精力的に取材してきた畠山さんが、その結果をみて総括します。

注目の東京8区。岸田首相の応援演説も空しく大差で敗れた石原伸晃氏。(撮影/畠山理仁)
注目の東京8区。岸田首相の応援演説も空しく大差で敗れた石原伸晃氏。(撮影/畠山理仁)

あなたの「一票の価値」は405万円! 

 第49回衆議院議員総選挙が終わった。

 まずはこの選挙に立候補してくれた1051人に心からの敬意を表したい。そして、「選挙に行こう」と呼びかけたみなさんにも感謝したい。投票した人、投票しなかった人、投票できなかった人たちも、600億円を超える総選挙の経費を負担してくれた。だから私はみなさんに「ありがとうございました」とお礼を言いたい。
 一人でも多くの人が選挙に関わることで、社会はみなさんが望む方向へ、1ミリぐらいずつでも進んでいく。過度に一喜一憂せず、選挙と末永く付き合っていくことが大切だ。

 今回の投票率は55.93%で、前回2017年の53.68%を2.25ポイント上回った。2019年参議院議員選挙での投票率が48.80%だったことを考えると、上昇傾向に転じている。しかし、55.93%は戦後3番目に低い水準で、まだまだ一票を棄てている人が多い。
 今回の総選挙にあたり、私は様々なメディアから取材を受けた。その際に強く感じたことは、メディアの人たちも含め、有権者の多くが「一票の価値」を相当低く見積もっていることだ。各地を漫遊して有権者と話しても、選挙権を「タダ同然」だと思っている人が少なくない。そして、多くの人が票を棄てている。

 私は何度でも強調したい。私たちは人生に関わる「選挙」という競技の参加費をあらかじめ支払っている。今年度は所得の約44.3%を税金や社会保障費として負担する見込みだ。これが国の運転資金であり、私たちは最大のスポンサーだ。だから国の行方を決める一票を持っている。一票の価値が決して安くないものだということは強く意識したい。

 このことを伝えるために、「一票の価値」をわかりやすく表す指標を探した。すると、単純明快で面白い計算式を見つけた。かつて『選挙ドットコム』の編集長を務めた増沢諒さんが、大学院生時代に編み出したものだ。その計算式は次のようなものである。

 一票の値段=国の予算×任期÷有権者数

 増沢さんに問い合わせると、これは海外の税金解説「Where Does My Money Go?」を元に作ったのだと教えてくれた。ここに日本の数字を当てはめてみる。

 国の予算(107兆円)×任期(4年)÷有権者数(1億562万人)=405万2262円

 なんと、405万円だ。私たちは一票を投じることで、その使い道に影響を与えられる。投票に行かなかった44.07%の人たちは、その権利を行使しなかった。選挙に行く人たちに、405万円の行方を「おまかせ」したということだ。
 日本はとても太っ腹な人が多い。

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新刊紹介

畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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