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「選挙はどろどろの人間ドラマ。それはまるで昼ドラ」——時事YouTuberたかまつななさんが読む『コロナ時代の選挙漫遊記』

「選挙はどろどろの人間ドラマ。それはまるで昼ドラ」——時事YouTuberたかまつななさんが読む『コロナ時代の選挙漫遊記』

10月5日に畠山理仁さんの『コロナ時代の選挙漫遊』が刊行されました。
選挙取材歴20年以上の開高健ノンフィクション賞作家、畠山さん。本書は2020年3月の熊本県知事選挙から2021年8月の横浜市長選挙まで、新型コロナウイルス禍で開催された全国15の選挙を、感染対策を万全にしながら丹念に現地取材した選挙ルポ記です。
その刊行記念として数回にわたり連続書評特集をお届けします。

1回目のプチ鹿島さんに続く2回目は、時事YouTuberとして政治や選挙の現場で活躍する、たかまつななさんの登場です。畠山さんと同じく、多くの政治家に直接取材するたかまつさんだからこその想いもあります。

選挙に関わる人たちの顔が見え、選挙が面白いと思わせてくれる本

畠山理仁さん。私が尊敬するジャーナリストだ。そんな畠山さんが新しく本を出した。『コロナ時代の選挙漫遊記』。

畠山さんは、いつ、どこの現場に行っても、遭遇する。私は大きな選挙の際にたまに記者会見取材にいくぐらいしかしていないが、畠山さんは全国を飛び回る。決してもうかる訳ではない。だから「旅費をどう抑えるかが最大の悩みだ」といい、深夜バスでいくこともある。それでも、なぜ畠山さんはそういう生き方をするのか。それは選挙の舞台が、こんなに面白いからなのかと改めて思った。決して難しい本ではない。ここには、いろんな人間ドラマが描写されていて、まるで昼ドラをみているかのようにさえ感じたのだ。

選挙は「返品不可能な高額商品を見定める機会」だと畠山さんは言う。商品の実物を見ないで買うのは怖くないか。そして、メディアではわからないことが多いから、できる限り候補者に会いに行ってほしいというメッセージが込められている。政治の本かと思い読み進めていると、いろんな人間ドラマが見える。候補者の事務所から演説のスケジュールを教えてもらえず明らかに嘘をつかれたり、「キンタ○~」とさけぶ支援者があらわれたり。他メディアの記者とのやりとりなども含め、選挙の舞台裏がくっきりと見えてくる。

中でも、スーパークレイジー君の章が見所だ。2020年の東京都知事選で突如現れ、面白候補者としてネタ的に取り上げられてもいたが、彼は今年1月の埼玉県戸田市議会議員選挙で当選した。公明党、日本維新の会、日本共産党など国政政党が支援する候補者たちも落選した選挙で、だ。
街宣車は黒塗りのベンツ、金髪に白い特攻服、全身には入れ墨。一般の政治家のイメージとはほど遠い。しかし愚直な選挙活動をしていたことがこの本からわかる。街頭演説の場でLINE交換をしたり、「あそこで今、期日前投票できますよ」と道順を教えたり、子どもたちと、ときには公園で遊んだり。その子どもたちが大人を説得し、親子で選挙に行ったりもしていた。

これは私もあまり聞いたことがない光景だ。票にならないと思われがちな子どもたちから、熱烈に支持され、当選したのだ。これは新しい選挙の光景であり、人口が少なく選挙にいかない若者が損をし、政治が高齢者に向いてしまう「シルバー民主主義」打開策のひとつのヒントかもしれないと思った。こういう情報が知りたいと思った。スーパークレイジー君が、「政策についてはあんまり聞いてもらえない」と嘆き、子どもたちにせがまれても投票日前日の1回をのぞき、パフォーマンスもしなかったのも面白い。

2021年1月の戸田市議会議員選挙でのスーパークレイジー君の選挙活動。(撮影/畠山理仁)
2021年1月の戸田市議会議員選挙でのスーパークレイジー君の選挙活動。(撮影/畠山理仁)
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たかまつなな

1993年、横浜市生まれ。時事YouTuberとして、政治や教育現場を中心に取材し、若者に社会問題を分かりやすく伝える。18歳選挙権をきっかけに、株式会社笑下村塾を設立し、出張授業「笑える!政治教育ショー」「笑って学ぶ SDGs」を全国の学校や企業、自治体に届ける。著書に『政治の絵本』(弘文堂)『お笑い芸人と学ぶ13歳からのSDGs』(くもん出版)がある。

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