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キーワードは耳。岸田内閣には「初耳内閣」「寝耳に水内閣」「空耳内閣」と名づけよう

勝利したのは岸田氏の報告集会。最後にようやくYouTubeでなく自民党総裁選に接することができた。(撮影/畠山理仁)
勝利したのは岸田氏の報告集会。最後にようやくYouTubeでなく自民党総裁選に接することができた。(撮影/畠山理仁)

岸田内閣のキーワードは「耳」

 9月29日の投開票日。この日の会場は自民党本部ではなく、都内のホテルだった。自民党本部よりは会場が広くなるため、私も現地で取材ができるかもしれない。そう思って9月27日に自民党本部に取材申し込みの問い合わせをしたところ、返ってきた答えは告示前と同じだった。

「YouTubeでご覧ください」

 それでも私は現地のホテルに向かった。ホテル内の別室で行われる各陣営の取材は可能だったからだ。

 この総裁選挙で勝利したのは、総裁選の期間中、「岸田BOX」という国民からの声を聞く窓口を作った岸田文雄氏。陣営の取材はオープンになっていたおかげで、新総裁就任直後の岸田文雄氏の報告集会にも立ち会うことができた。

「私の特技は人の話を聞くこと」と語っていた岸田氏の姿勢は、Twitterで何人もの人をブロックし、「ブロック太郎」との異名を取る河野太郎氏とは対象的だった。

 しかし、私は岸田氏が新総裁に就任してから行った党内人事を見て首を傾げた。副総裁に麻生太郎氏、幹事長に甘利明氏、組織運動本部長に小渕優子氏、国会対策委員長に高木毅氏と、あまりにも「政治とカネ」の問題で話題をさらった人物が多すぎたからだ。岸田氏は人事にあたり、その耳で誰の話を聞いてしまったのだろうか。

 本日10月14日には岸田内閣の顔ぶれもわかった。こちらは全20閣僚中、13人が初入閣だ。岸田氏が「中堅若手の登用が必要」と言っていた通り、若手も登用されている。重要ポストは主要派閥で固め、「老壮青」のバランスを取ったように見える。
 ただし、初入閣したみなさんの名前は「初耳だ」という国民も多いのではないだろうか。私は岸田内閣において大切なキーワードは、人の話を聞く「耳」だと思っている。そこで私はこの内閣を「初耳内閣」と名付けたい。

 実はもう一つ考えたネーミングがある。それは「寝耳に水」内閣だ。

 岸田氏は「10月14日解散、10月19日公示、10月31日投開票」というスケジュールを固めたと報じられている。これまで有力と見られていた「10月26日公示、11月7日投開票」ではない。もともとみんなが勝手にスケジュールを予想していただけなのだが、10月26日は「大安」だ。それが「10月19日(仏滅)公示、10月31日(仏滅)投開票」というスケジュールになった。これは多くの人にとって「寝耳に水」だと思う。

 組閣から解散までもあっという間。すぐに総選挙に突入してしまうため、大臣の肉声を聞く機会はあまりなさそうだ。

「空耳内閣」かもしれない。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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