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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」

政治家が選挙で選ばれることの大切さを教えてくれる首相や防衛省の記者会見

フリーランス記者に課された理不尽な条件

 防衛省のウェブサイトには、記者会見に参加するための条件が書かれている。

1. 防衛省における定例記者会見については、防衛記者会に所属しない方であっても、次の(1)から(7)のいずれかに該当する方は、所定の手続きを行った上で参加することができます。

(1)日本新聞協会会員社に所属する記者
(2)日本民間放送連盟会員社に所属する記者
(3)日本専門新聞協会会員社に所属する記者
(4)日本雑誌協会会員社に所属する記者
(5)日本インターネット報道協会法人会員社に所属する記者
(6)在日外国報道協会(FPIJ)会員社に所属する記者
(7)上記(1)から(6)に該当しない記者で、上記(1)から(5)に掲げる団体の会員社が発行または運営する媒体に定期的に署名記事を提供する者

 私がさっそくメールで問い合わせると、「事前登録申込書(フリーランス等用)」という書類が送られてきた。それを見ると、ウェブサイトには記載されていない「理不尽な条件」が課されていることがわかった。

(注2)日本新聞協会、日本民間放送連盟、日本専門新聞協会、日本雑誌協会及び日本インターネット報道協会のいずれかに加盟する企業・団体が発行する定期的刊行物またはこれらの企業・団体が継続的に運営する電子メディアに、直近3か月以内に掲載された署名入り記事で、申込者自らが執筆し、かつ防衛省の所掌事務に関連する記事に限ります。直近3か月間の各月1点以上(計3点以上)の記事を記載してください。

 なんと、署名記事の「内容」に注文をつけていた。つまり、記者がそれまでどんなことを書いてきたかによって参加の可否を決めるのだという。おかしな話だ。

 私は「記者であること」の証明ができれば十分だと考え、雑誌協会加盟社の雑誌に掲載された署名記事だけでなく、あえて非加盟社の雑誌に掲載された記事も送って申し込みをした。すると、防衛省からは「防衛省の所掌事務に関する記事ではない」「前述のメディア団体に属されていない」との理由で事前登録を拒否された。まるで「検閲」ではないか。

 防衛省はフリーランス記者に署名記事の提出を求める一方で、日本新聞協会、雑誌協会などの記者証を有する記者には署名記事の提出を求めていない。これは記者によって対応を変えていることを表している。

 そもそも記者の仕事の一つは権力の監視だ。権力側から「取材してもいい」と許可されるような許認可事業ではない。公式発表では不十分だから、多様な問題意識をもった記者が取材・報道する意味がある。役所の許可を得ないと取材できないのなら、役所が隠そうとする不祥事を誰が報じるのだろうか。

 防衛省が批判的なことを書かれたくないのであれば、批判されないような行動をとればいいだけだ。入り口で記者を選別する防衛省には「公の仕事」という意識が欠如している。

 私がこうした持論をTwitterに書くと、多くの人から意見が寄せられた。批判的な意見ももちろんあった。そこで私がこう言ったら、その人たちはどう思うだろうか。

「もし私に質問をしたり意見をしたりしたい人は、過去3カ月に各月1本以上、団体加盟の媒体に署名記事を書いたコピーを私に提出してください。記事は畠山理仁の仕事について書かれたものに限ります。その際、本人確認のために免許証などの身分証明書のコピーも送ってください。私が審査して質問可能かどうかを連絡します」

 きっとほとんどの人が怒るだろう。防衛省がやっているのは、まさにこれだ。

 公的機関である防衛省がやるべきことは、こんなことではない。多様な記者の監視の目を受け入れ、それに恥じない仕事をすることだ。
 もちろん行政のトップである政治家も、国民のために仕事をするべきだろう。政府が保有する情報は、すべて国民のものである。

コロナ禍、密を避ける必要はわかる。しかし緊急事態下の一国の首相会見にしては寂しい……。(撮影/小川裕夫)
コロナ禍、密を避ける必要はわかる。しかし緊急事態下の一国の首相会見にしては寂しい……。(撮影/小川裕夫)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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