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政治家が選挙で選ばれることの大切さを教えてくれる首相や防衛省の記者会見

防衛省の記者会見でも参加には制限がある

 国民が政府の方針や動きを知る方法はいくつかある。その一つが各省庁が行っている記者会見だ。税金を使って仕事をする行政の動きは、国民にできるだけ明らかにされることが望ましい。このことを否定できる人はいないと思う。

 しかし、日本の省庁には、記者会見に参加できる記者を制限している記者会見がいくつかある。代表的なものが防衛省の記者会見だ。

 防衛省における定例記者会見は、長らく閉ざされてきた。私は2009年の段階で、防衛大臣の記者会見へ参加を希望した。しかし、当時は記者会見を主催する防衛省の記者クラブ「防衛記者会」の幹事社から「参加は認められない」と断られた。記者が記者を排除している状況に強い違和感を覚えた私は『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)という本まで書く羽目になった。

 防衛省の記者会見に大きな変化があったのは2018年12月。寺澤有氏、三宅勝久氏、清谷信一氏、布施祐仁氏など、多くのフリーランス記者の働きかけにより、防衛記者会が総会を開き、「一定の要件を満たせばフリーランスの記者も参加可能」との方針を決定したのだ。

 それまで防衛省側は「会見の主催者である防衛記者会が認めれば」という態度を取っていた。しかし、防衛記者会の決定を受けた後は迷走した。「検討中」という言葉を繰り返し、なかなか防衛記者会以外の記者の参加を認めてこなかった。

 私は2019年3月5日に、防衛省広報室にこんな問い合わせをしている。

「いったい何年待てばいいのか」

 それに対して防衛省の担当者はこう答えた。

「うーん。何年という形でもないとは思いますけれども。今の段階で予断を持っていつまでにというのはお答えできない。ただ、準備のほうは進めていますので。お待ちいただけないでしょうかね」

 防衛省がウェブサイト上に「防衛省における定例記者会見への参加について」というページを公開し、事前登録に関する問い合わせを受け付け始めたのは2021年1月4日のことだ。

 防衛省の検討開始から、実に2年以上が経過していた。

1月4日の菅総理念頭会見に「くじに当たり」参加した畠山氏。しかし質疑応答はわずか17分。畠山氏や海外プレスの質問に答える機会はなかった。(撮影/小川裕夫)
1月4日の菅総理念頭会見に「くじに当たり」参加した畠山氏。しかし質疑応答はわずか17分。畠山氏や海外プレスの質問に答える機会はなかった。(撮影/小川裕夫)
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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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