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新型コロナ禍で「激変」した2020年の選挙まとめ。「保守分裂」「現職落選」の連鎖は2021年も続くのか?

静岡4区補選で当選した深澤陽一陣営。街頭演説の場所は事前告知をしなかったため聴衆は少なく、批判含めた反応もほとんどなかった。(撮影/畠山理仁)
静岡4区補選で当選した深澤陽一陣営。街頭演説の場所は事前告知をしなかったため聴衆は少なく、批判含めた反応もほとんどなかった。(撮影/畠山理仁)

コロナが「有権者のダイレクトな反応」を奪った

 静岡4区補選で当選した深澤陽一陣営は、選挙期間中に150カ所以上で街頭演説を行なった。当選した深澤も演説場所の事前告知はしていない。だから聴衆の数は山口と大差ない。大きく違うのは、その演説をインターネット配信したことだ。そのため有権者は現地に行かなくても深澤の演説を聞くことができた。

「なるべく人がいないところを探してやります。変な話ですけど」

 選対のスタッフがそう語ったように、深澤陣営にも戸惑いが見えた。街頭演説はインターネットで生配信されていたものの、聴衆の反応がわかりにくいからだ。
 コロナ以前であれば、候補者の言葉に聴衆が反応する。表情や拍手、掛け声などだ。しかし、インターネット配信では、そうした「場の雰囲気」がなかなか候補者本人には伝わらない。つまり、候補者からの一方通行になる。スタッフであればチャット欄などで反応をある程度把握できるが、選挙中の候補者は忙しい。そのため候補者本人は現場にいない有権者からの反応をカバーできないのが実態だ。

 わかりやすくたとえる。
「リモート会議で自分以外の参加者がずっとマイクオフ状態」だと考えてほしい。自分が言うべきことは思う存分話せるが、聞いている方の反応がほとんどつかめない。
 私もコロナ禍で、何度かリモートでの講義や講演をする経験をした。その中で何度か「ここは聞いている人を笑わせよう」と思って放った渾身のギャグに全く反応がなくて焦った。大々的に滑ったと恥じ入り、その後に何を話したか覚えていないことも多かった。講演の後で主催者に「面白くなくてすみません」と謝ると「画面上ではみんな大笑いしていましたよ。講師以外は全員マイクオフだったから伝わらなかったんですね」と恐縮された。幸い、あとから「大爆笑しました!」という参加者からの感想をメールでもらったが、連絡が来るまでの数日間は何を言っても滑る気がして生きた心地がしなかった。
 この経験からわかった。「自分以外全員マイクオフ」は有権者の反応がつかめない。もっとも象徴的だったのは、当選を決めた直後の深澤の一言だ。

「今回の選挙戦において、安倍総理に対しての批判的な言葉が私に寄せられたことはほとんどなかった」

 これがコロナ禍で行われる選挙の難しさだ。私たちが「コロナ以前」に共有していた「場の空気」には、多くの情報が含まれていた。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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