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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」

菅新総裁決定! 「政党トップを決める2つの選挙」を通じてわかった、自民党のうまさと底力

党員や党友には優しくとも、記者は明確に選別するのが自民党

 実は合流新党代表選挙と自民党総裁選を通じた候補者同士の論戦で、与野党の政策の違いは鮮明になっている。
 自民党総裁に選ばれた菅義偉氏は、安倍政権の継続を打ち出し「自助、共助、公助、そして絆」と訴えた。
 一方、立憲民主党代表に選ばれた枝野幸男氏は、総裁選での勝利が確実と言われた菅氏を強く意識して、「政治が自助を叫ぶのは責任の放棄。公助を充実させるのがわれわれの政党だ」と訴えた。
 消費税増税についても、自民党と立憲民主党では考え方が異なっている。
 ……のだが、やはり代表選で世間にアピールできなかった立憲民主党の政策は国民にとってまだまだ馴染みがないように感じる。

 地味でもいい。地道に自らの正しさを訴えることは大切なことだ。しかし、「有権者との関わりを決して断ち切らない」という視点は絶対に忘れてはいけないものだ。
 目を引くために変わったことをやれというつもりはない。目を引くために奇抜なことをして消えていく候補者を私は何人も見てきた。
 いちばん大事なのは、「政治はあなたにも関係がある。政治を決めるのはあなたである」という訴えではないだろうか。

 ただし、立憲民主党と自民党のメディア対応には大きな差があることも書いておきたい。
 立憲民主党の代表選挙に関する取材は全てのメディアに対してオープンだった。しかし、自民党の総裁会見で質問できるのは「平河クラブ」という記者クラブの記者だけだ。私のようなフリーランスの記者は質問することができない。総裁選当日の会場取材に至っては、事前説明会の日時も教えてもらえなかった。
 党員や党友には優しくとも、記者は明確に選別するのが自民党だった。

大きなチャンスを逸した野党の立憲民主党。枝野代表は今後、与党を脅かす党を作れるか。(撮影/畠山理仁)
大きなチャンスを逸した野党の立憲民主党。枝野代表は今後、与党を脅かす党を作れるか。(撮影/畠山理仁)

立憲民主党の結党大会が注目されない理由

 二つの選挙が終わった今、立憲民主党の枝野幸男代表と自民党の菅義偉総裁の、総裁就任後初めての挨拶を引いてみたい。

 まずは立憲民主党・枝野幸男代表。
「代表選挙には地方組織、自治体議員、党員、パートナーズ、サポーターの皆さんなどに直接参加してもらえなかった。改めてお詫びを申し上げる。それぞれの政党の制度の違いによるものとはいえじくじたる思いである」

 一方の自民党・菅義偉総裁。
「総裁選挙が終わった今、会場のすべての皆さん、そして全国の党員、党友の皆さん、自民党の旗のもとに一致団結をしてこの日本の国を前に進めようではありませんか」

 ここで再度確認しておきたい。自民党は当初、党員投票を予定していなかった。あくまでも途中から「予備選挙」を導入したにすぎない。地方組織の力で結果的に参加できたわけだ。それでも「一緒に」と力強く言い切る抜け目なさ。ここが自民党の強さである。

 9月15日には立憲民主党の結党大会がある。しかし、残念なことに、世間の注目は菅義偉新総裁の党内人事や菅総理大臣の閣僚人事に集まってしまうだろう。野党は大きなチャンスを逸したことを強く認識したほうがよい。

 自民党総裁選の結果が出た後、菅義偉候補に投票した衆議院議員は私にこう言った。
「岸田さんは頑張りましたね。地方票では3位だったけど、無派閥の議員を切り崩して議員票で2位に食い込んだ。もし全体で3位になっていたら次はなかったかもしれない」
 菅総裁はいつ解散しそうですか?
「菅さんは実務型だから、まずはきっちり仕事をするんじゃないですかね。少なくとも、今噂されている『10月25日投票』はないんじゃないかと思う。新型コロナの対応もありますし、これからインフルエンザ、ノロウイルスの季節がやってきます。台風の被害も出るかもしれない。そんな時に選挙なんてやってられませんからね」
 では、状況が落ち着くまではなさそうですか?
「まあ、そうは言っても私は準備しますけどね。来週は選対会議を開きます」

 そろそろ全有権者が投票できるチャンスがやってくるかもしれない。
 備えよ常に。がんばろう有権者!

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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