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畠山理仁「アラフォーから楽しむ選挙漫遊記」

菅新総裁決定! 「政党トップを決める2つの選挙」を通じてわかった、自民党のうまさと底力

いまだに「民主党」があると思っている有権者は多い

 9月10日、合流新党の代表選と党名選挙が行なわれ、枝野幸男候補107票、泉健太候補42票で枝野幸男新代表が選出された。同時に行われた新党名の選挙では、枝野候補が提案した「立憲民主党」が94票、泉候補が提案した「民主党」が54票となり、新しい党名に「立憲民主党」が選ばれた(その他の政党名を書いたものが1票あった)。

 合流新党で選挙があったことを知っている人なら、気持ちを新たにできるだろう。しかし、世間は政治に興味を持っている人ばかりではない。関心のない人にとっては、「立憲民主党」「枝野幸男代表」は「以前と変わらない」と認識されることだろう。

 筆者は選挙の取材で各地の人の声を聞くことがあるが、いまだに「民主党」があると思っている有権者は多い。その流れを汲む「民進党」の存在を知らないという人もいる。
 もちろん、「名前」と「顔」は重要だから、無理して変える必要はない。しかし、まずはしっかりと「代表選挙・党名選挙」が行なわれたことを世間に認知してもらう必要があったのではないだろうか。
 永田町の空気と世間の空気は大きく違う。だから選挙の投票率が一向に上がらないのだと筆者は感じている。

9月10日に行われた合流新党の代表選と党名選挙。枝野幸男候補(左)が泉健太候補に勝ち新代表が選出された。(撮影/畠山理仁)
9月10日に行われた合流新党の代表選と党名選挙。枝野幸男候補(左)が泉健太候補に勝ち新代表が選出された。(撮影/畠山理仁)

今の支持者も参加できないようでは政権交代は見えてこない

 もう一つの鍵は、政治の側が「民意をどう尊重していくか」ということだ。この見せ方も自民党はうまい。

 合流新党は手続き上、立憲民主党、国民民主党をそれぞれ「解党」することになっていた。そのため、党員、サポーター、パートナーズといった支援者たちに投票してもらうことは難しかった。
 解党して新しい党がこれからできるのだから、党員を最初から確定することが難しいという理由は理解できる。
 しかし、何らかの「民意」を反映する仕組みは作れたはずだ。まったく参加できなければ、それは「他人事」になってしまう。これでは一般の人が政治に興味を持たなくなるのは当たり前だ。
 せめて候補者に対する質問を募集したり、党名を国民から広く公募したりするなどの「しかけ」を作ってもよかったのではないか。誰でも気軽に参加できる党キャラクターの公募やキャッチフレーズ、新党を応援する川柳を募集してもよかったのではないか。
 これまで政治に対して興味を持っていなかった人に対して「私の力が必要?」と思わせる工夫があってもよかったのではないか。
 そうした努力のあとが見られないままに代表選挙が進行したのは非常にもったいない。せっかく新党の存在や与党との違いを世間にアピールするチャンスだったのに、「自分は参加できない」と思わせた途端、多くの人は関心を失ってしまったことだろう。
 「次期総理を決める総裁選」であれば、まだ自分が投票できなくてもどこか気になる。しかし、野党はもっと多くの人を巻き込むことに心を砕いてもよかったのではないか。
 今の支持者だけを相手にしている、いや、今の支持者も参加できないようでは、政権交代は見えてこない。いくら「正しいやり方」をしている自負があっても、支持の輪は広がっていかないと筆者は思っている。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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