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菅新総裁決定! 「政党トップを決める2つの選挙」を通じてわかった、自民党のうまさと底力

20年以上、国内外の選挙の現場を多数取材している、開高健ノンフィクション賞作家による“楽しくてタメになる”選挙エッセイ。
 前回の第21回は安倍晋三首相が辞意を表明した当日、新型コロナ禍のため場所を告知せずゲリラ的に演説を行う、れいわ新選組・山本代表と、その演説場所を予測して追いかける著者との戦いをお伝えしました。 今回は、まさに今日、9月14日(月)午後に決まったばかりの自民党総裁選と、同時期の10日に行われた合流新党代表選とを比較してわかったことお伝えします!

新総裁決定後の報告集会で手を振る菅自民党新総裁。(撮影/畠山理仁)
新総裁決定後の報告集会で手を振る菅自民党新総裁。(撮影/畠山理仁)

合流新党が単独で目立てる日は9月7日だけだった

 与党が与党であるのには、ちゃんとした理由がある。そんなことを痛感する2週間だった。
 やっぱり自民党はうまい。何がうまいって、政治や選挙への人々の巻き込み方がうまい。
 この間、日本の政界では二つの大きな選挙が行なわれた。公職選挙ではない。「政党のトップを決める選挙」である。

 そのうちの一つが、9月7日告示、10日投票の日程で行なわれた「合流新党」の代表と党名を決める選挙だ。
 これは、立憲民主党、国民民主党、社会保障を立て直す国民会議、無所属フォーラムの国会議員149人(衆院106人、参院43人)が合流して結成する「新党」の行方を占う選挙だった。
 この代表選挙には、立憲民主党の枝野幸男代表と国民民主党の泉健太政調会長が立候補をした。提案する新党名は、枝野候補が「立憲民主党」、泉候補が「民主党」だった。
 国会議員149人という数字は、2009年に政権交代を果たす前の旧民主党(衆院115人)や、2012年12月に政権復帰する前の自民党(衆院118人)に匹敵する。
 たしかに数の上では「政権交代」が見えてくる。何もなければ巨大な野党第一党が誕生する代表選は世間の注目を集めるはずだった。

 しかし、そこに不測の事態が起きた。前回の連載でも触れたが、8月28日、安倍晋三首相が記者会見で辞意を表明したのだ。これによって、「次の総理」を決めることになる自民党総裁選挙が野党第一党の代表選とほぼ同時期に行なわれることになった。
 自民党総裁選挙の告示は9月8日、投票日は9月14日に設定された。一方、合流新党の代表選挙は9月7日告示、10日投票。
 自民党総裁選挙の期間は合流新党代表選の2倍もある。しかも、自民党総裁選は候補者が3人出た。一方、合流新党の代表選は2人。「次期総理」を決める選挙で、なおかつ候補者も野党より多い。当然、世間への露出は増えることになった。
 つまり、合流新党が単独で目立てる日は、自民党総裁選と日程がかぶらない告示日の7日しかなかった。言ってみれば、告示日が最大のチャンスだった。もし、ここで女性も含めて多様な候補者が何人も立っていたらどうなっていただろうか。
 合流新党の代表選では、「第三の候補」を擁立しようという動きもあった。しかし、推薦人が集まらず、実現しなかった。この時点で、すでにメディア露出は自民党が圧倒することが予想された。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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