2020.6.8
選挙に出るリスクを冒さずに「選挙の実態」がわかるオススメ映画と書籍
政治と選挙のすごさがわかる書籍
もう一つ、どうしても紹介しておきたい本がある。東京都知事選を前に、都民が読んでおくべき本が出た。小池百合子東京都知事の評伝『女帝 小池百合子』(石井妙子著・文藝春秋)である。
私はページをめくるたびに驚いた。小池がこれまでメディアに対して語ってきたことと、本書で書かれていることのギャップがあまりにも大きく、激しかったからだ。
目を引くのは、カイロ時代の同居人の証言だ。それだけではなく、100人以上の関係者を取材し、幼少期から現在までの小池を分析、検証した本書は、値段以上の価値がある。
今後も小池との関係を維持したいメディアは、おそらくこの矛盾に触れないだろう。私は拙著『黙殺』で小池の政治家としてのいい加減さを指摘してきたが、『女帝』の問題提起は、より根深いものだと感じた。
4年前、東京都民は小池の真実の姿を知った上で都知事選に勝たせたのだろうか。何も知らずに生命と財産を託したのだろうか。そんな小池を勝たせた都民こそが、実は一番の「怪物」ではないのか。
都民は都知事選の前に読んで、それぞれの答えを導き出してもらいたい。
選挙と言えば、忘れてはいけない本がもう一冊ある。第51回大宅壮一ノンフィクション賞(2020年)の候補作にもなっている『無敗の男 中村喜四郎 全告白』(常井健一著/文藝春秋)だ。
中村は政治家として飛ぶ鳥を落とす勢いだった1994年、ゼネコン汚職事件で現職国会議員のまま逮捕された。逮捕直前に無所属となり、実刑判決を受けて刑期を終えた後も茨城7区で選挙に勝ち続けている。
これまでの戦績は14戦14勝。無敗だ。
同書には、奇妙で滑稽にも思える中村の活動が余すところなく描かれている。読みすすめると、中村が選挙に強い理由がよくわかる。ここまで中村の選挙を細かく描写した類書はない。なぜなら中村は、メディアに対して25年間も沈黙してきた政治家だからだ。
中村の選挙を「昔の選挙」と笑う政治家もいるだろう。しかし、一度も負けたことがない中村の選挙からは、必ず得るところがあるはずだ。