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選挙に出るリスクを冒さずに「選挙の実態」がわかるオススメ映画と書籍

家族の忍耐の上に成り立つ選挙

 初めての選挙で、小川は自転車に「本人」の幟を立てて選挙区内を走り回った。ライバルは自民党現職の3世議員・平井卓也衆議院議員。香川が地元の四国新聞・西日本放送のオーナー一族である平井に「地盤・看板・カバンなし」で挑んだ小川は落選する。
 初当選は2年後の2005年(比例復活)。2009年に民主党が政権交代を果たした時には初めて小選挙区で平井に勝利した。
 しかし、2012年に民主党が政権から転落してからは雌伏の時が続いた。2017年総選挙では、希望の党への合流を決断した前原誠司の最側近として、小池百合子代表の言動に翻弄された。
「試練やなあ」
「無所属なら、かっこいいわね」
 小川はカメラの前で苦悩した末、希望の党からの立候補を選択した。街頭では有権者から「イケメンみたいな顔して、心の中真っ黒やないか」との厳しい声を浴びた。小川はそれを「当然の声です」と飲み込んだ。

 小川の家族は選挙のたびに事務所に詰めて手伝ってきた。2人の娘は「娘です。」と書かれたタスキを着けて街頭活動に同行するまでに成長した。そしてそこで、父が罵倒される姿を見た。小川の妻や両親は「(政界で)いらないなら、家族に返してくれと思う」と語りながらも、ずっと小川の選挙を支えてきた。小川が信念を曲げたら「一番に引きずり下ろす」とも言った。
 国のため、社会のため、子どもたちの未来のためにと立候補を決断した小川は、一番身近な家族の忍耐抜きには成り立たない選挙を戦ってきた。
 それでも小川はカメラに向かって言う。

「政治っていうのは、勝った51がどれだけ残りの49を背負うかなんです。でも、勝った51が勝った51のために政治をしてるんですよ、いま」

 青臭く思える小川の情熱に、周囲の人々は巻き込まれていく。小川の応援に駆けつけた慶應義塾大学経済学部教授・井手英策の演説も必見だ。
 この映画の面白いところは、鑑賞後の印象が「絶望」ではないことだ。最後には「誰が政治の主役か」と気づく。その答えはご自身で見つけてみてほしい。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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