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『日本列島全員立候補』か『日本列島全部無投票』か。どちらの未来を望むのか?

全国375町村のうち93町村議会が無投票ないま

「私が狙うのは無投票当選!」と豪語して選挙に出る候補者、高嶋勇喜(てつわんあとむ)氏。(撮影/畠山理仁)
「私が狙うのは無投票当選!」と豪語して選挙に出る候補者、高嶋勇喜(てつわんあとむ)氏。(撮影/畠山理仁)

 4年前の2015年4月に行われた統一地方選挙では、全国372町村のうち89町村議会が無投票だった。定員割れしたケースは4町村。

 今年4月の統一地方選挙では、全国375町村のうち93町村議会が無投票。定員割れしたケースは8町村に増えた。

 簡単な事実を言う。無投票の場合、有権者は「投票」することができない。つまり、立候補した人がそのまま当選する。

「この人にやってもらいたい」
「この人だけは嫌だ」

 有権者は、こうした意思表示をする機会さえも失われてしまう。

『日本列島全部無投票』
 
そんなタイトルの本が、小説ではなくノンフィクションで出てしまいそうな勢いなのだ。

 実際、「私が狙うのは無投票当選!」と豪語して選挙に出る候補者も現れた。それが2018年2月4日執行の茨城県境町長選挙に立候補した高嶋勇喜(たかしま・てつわんあとむ)氏だ。

 ん? と思った人のために説明する。「勇喜」と書いて「てつわんあとむ」と読ませる。これは候補者の本名だ。高嶋氏は2016年に「努(つとむ)」から「勇喜(てつわんあとむ)」へと改名をしていた。

 高嶋氏は、私が何度確認しても、「狙いは無投票当選しかない」と胸を張った。それどころか、「今後も無投票になりそうな選挙がある自治体に、被選挙権が得られる3ヶ月前に引っ越して選挙に出る」と予告した。

 ちなみに、一度の選挙で複数人の当選者を選ぶ市区町村議会議員選挙(大選挙区)の場合、約2%〜2.5%の得票率があれば当選する可能性が高い。この数字を過去の選挙データからはじき出し、各地の選挙に候補者を立てて当選者を出しているのが「NHKから国民を守る党(N国)」だ。N国はこの戦略で、すでに34人の地方議員を誕生させている。カニやメロンを有権者に贈らなくても勝てる戦いがそこにはある。

 選挙は立候補しなければ当選しない。逆に言えば、立候補すれば当選がぐっと近づく。選挙に行く40人のうち39人に嫌われても、1人に名前を書いてもらえば得票率2.5%で当選が見えてくるからだ。

 日本は今、半数以上の人が選挙に行っていない。立候補する人も少ない。だから選挙に興味を持った人たちだけが、選挙の世界を自由自在に楽しむ状況が続いている。

『日本列島全員立候補』か『日本列島全部無投票』か。

 被選挙権を持つみなさんは、どちらの未来をお望みだろうか。

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畠山理仁

はたけやま・みちよし●フリーランスライター。1973年生まれ。愛知県出身。早稲田大学第一文学部在学中の93年より、雑誌を中心に取材、執筆活動を開始。主に、選挙と政治家を取材。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』で、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞(集英社より刊行)。その他、『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)などの著書がある。
公式ツイッターは@hatakezo

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