2021.12.4
恋愛依存体質の私が、ホス狂いを卒業して幸せな結婚生活を送れる理由
『私たちは生きづらさを抱えている』『発達障害グレーゾーン』などの著書があるライターの姫野桂さんが、発達障害女性たちの恋愛事情に迫るルポ連載。
前回に続き、ホスト沼を抜け出してネトゲ廃人になりかけ、そこで出会った男性と結婚したルイさん(仮名)のお話を伺います。
オンラインゲームで知り合った顔も知らない男性と同棲
ホストに障害年金300万円を貢ぎ、友達からも縁を切られそうになってようやく「脱・ホス狂い」に成功したルイさん。ホスト通いを辞めた直後は喪失感から「ネトゲ廃人」になっていたが、そのオンラインゲーム上で出会ったお互い顔も知らない男性の元に引っ越して同棲が始まる。
「彼と付き合うとき、私は好きになる人に対してすぐに依存してしまうことと、発達障害のことも伝えました。でもそんなカミングアウトに対して返ってきた彼の言葉は『別に依存していいよ、俺、依存されないから』でした。彼と付き合い始めてから本当に恋愛依存がなくなりました。多分、同棲からスタートしたせいもあるんですよね。今までは離れている時間が苦痛で『離れたくない』とワーワー言っちゃうタイプだったので……。それがないのが自分にとってすごくストレスフリーだったし、初めて私のことをものすごく好きでいてくれる人がいるんだなと実感しました」
彼の家に越してから仕事を探し、近所のネットカフェで働き始めた。じっとしていることが苦手な特性のある彼女にとって、受付も清掃も注文もとバタバタと働かねばならないネットカフェの仕事は合っていたようだ。
そうして、当時はまだ彼の収入も少なかったので家事にも力を入れ始め、節約レシピで自炊に励んだ。仕事が休みの日は部屋中の大掃除をした。お互い喫煙者なので壁に染み付いたタバコのヤニも毎週拭く。発達障害というと「汚部屋」というイメージがあるが、ルイさんをはじめ、驚くほど掃除や整理整頓にこだわるという人もいる。ルイさんは、自分はだらしないので、毎日きちんと掃除していないとすぐに汚くなってしまうという強迫観念があるそうだ。
同棲から5年で結婚
しかし、同棲となると相手の嫌な面も自ずと目に入ってくる。ルイさんは彼が脱いだ靴下をそのまま床に放置することと、数日間お風呂に入らないことに悩んだ末、喧嘩にならない解決方法を考えた。
「彼は私のことが大好きなんです。だから、『脱いだ靴下は洗濯機に入れてもらえるとルイちゃんは喜ぶな』と言ったら、私のためになるのならと喜んで洗濯機に入れてくれるようになりました。また、なかなかお風呂に入らないことに関しては『お風呂貯金』というものを始めました。基本、一緒にお風呂に入るのですが、脱衣所に貯金箱を用意して、彼がお風呂に入ったら私が100円入れる、入らなかったら彼が100円入れる、というルールを作りました。そしたらそれがゲーム感覚で楽しかったようで毎日お風呂に入るようになりました。貯まったお風呂貯金で旅行にも行きました。
どうしたら嫌な空気にならずに楽しく過ごせるか、を常に考えるようにしています。以前、彼が洗濯物を畳んでくれていたので『わー! 私が知らないうちに妖精さんが畳んでくれていたんだね!』と言うと、そのワードを気に入ったのか、『妖精さんが掃除してくれていたよ』と言いながら家事を手伝ってくれるようになりました」
このように順風満帆にいっていた同棲生活だったが、途中で彼の持病が再発してしまったり、ルイさんの勤務していた店が急に閉店することになり不当解雇されてしまったりと、何度か乗り越えねばならない事件は起こった。しかし、彼の持病は通院でなんとか回復し、彼女も前の職場を労働基準監督署に訴え、不払いの給与を取り返した。その後は就労移行支援所に通って新たな職に就けることになり、今はカラオケ店で働いている。当初は障害者雇用枠を探していたが、なかなか見つからず、妥協してクローズ(障害者であることを公表しないこと)で働くことにしたそうだ。
そして同棲から5年後、無事二人は結婚した。期限を決めないとダラダラといつまでも同棲してしまうことを危惧し、既に記入して判を押すだけの状態にした婚姻届を額縁に入れて部屋に飾り、「ここを目指して頑張ろう」と二人で結婚に向けて信頼関係を高め合っていたという。
