2021.11.20
障害年金300万円が消えた……発達障害女子がハマったホストという沼
『私たちは生きづらさを抱えている』『発達障害グレーゾーン』などの著書があるライターの姫野桂さんが、発達障害女性たちの恋愛事情に迫るルポ連載。
前回は、モテる女子リナさん(仮名)が、離婚に至った理由が明かされました。
今回は、失恋の痛手からホストにはまってしまったルイさん(仮名)のお話を伺います。
障害年金を申請したら300万円が舞い込んだ
原宿系の派手可愛いファッションで現れたのはルイさん(34歳・仮名)。彼女には発達障害の一種であるASDの診断が下りている。
「自閉スペクトラム症、いわゆるアスペルガーの診断が下りたのは14歳のときでした。その頃から発達障害の二次障害のうつ病がひどくて自傷行為や自殺未遂を繰り返して、精神科に入院していた時期もあって……。
元々学校という空間が嫌いで高校も単位制の学校に進学して、その後は映画監督を目指して東京の映像系の専門学校に行きました。専門学校での勉強は楽しかったのですが、自分よりも映画に詳しい人がたくさんいてついていけなくなって、結局中退してしまいました。その後、都内でとある企業に就職したのですがうつ病からまた自殺未遂をしてしまい、心配した親から実家に強制送還されました」
福岡県の実家に戻ってからは派遣でサービス業に就くが、給与は月12〜13万円だった。しかし障害年金が2ヶ月に1度12万円入っていたのと、実家暮らしだったこともあって家賃と食費が浮く分、生活していくことはできた。
「障害年金って、申請をしたら病気を発症した時点まで遡ってもらえるんです。私の場合、発達障害の二次障害のうつ病を14歳のときに発症しているので、その時点からの分が300万円近く入ったので貯金をしていました」
失恋の痛手からホスト沼へ
ルイさんは約10年前の23歳の頃、ホスト狂いだった過去がある。
ルイさんがホストにハマったきっかけはLINEグループでの何気ない会話だった。当時、「ホス狂いの部屋」という名前のLINEグループに参加しており、そこではホストクラブに関する様々な情報が飛び交っていたという。
最初は情報を眺めているだけだったが、ルイさんも「行ってみたらどう?」と誘われ、SNSで知り合ったデビューしたばかりのホストが働いている店へと足を運んだ。
ホストクラブには「永久指名」という制度があり、一度その店でホストを指名したら、他のホストには変えられない。そして自分が指名したホストのことを「担当」と呼ぶ。ルイさんがホストクラブにハマったのにはある理由があった。それは失恋———。
「長いこと付き合っていた彼に『もうお前のことを支えきれない』と振られてしまったんです。私、好きになった相手には尽くし過ぎて依存してしまうところがあって。実は初めてホストクラブに行ったのは二十歳のときで、そのときは興味本位だったし、他に熱中している趣味があったのでハマりませんでした。初回(編集部注※初めて来店した客向けに安く設定されている料金)で行ったので、たくさんのホストが次々に出てきて、最後に送り指名(※見送ってくれるホスト)を選んでくださいと言われ、誰がいいのかもう覚えていなかったので名刺が面白かった人を適当に選んだくらいです。初めてのホスト体験はそんな感じでした。でも、二度目のホスト通いは失恋の痛手を負っていたせいかすごく楽しかったです」
私自身も、ホストにはまりかけたことがある。初めてホストクラブに行ったのは29歳のときで、正直に言えば楽し過ぎた。内装はまるでお城の中のようで、たくさんのイケメンたちがお姫様扱いをしてくれて、話も面白く、夢の世界に紛れ込んでしまったかのような興奮を覚えた。ルイさんもきっと、失恋後のホストクラブに癒やされていたのだろう。
初めて知ったのだが、日本一の歓楽街と言われる新宿歌舞伎町のホストクラブは通常夜から営業しているが、福岡をはじめとする地方のホストクラブでは朝の5時から営業するところがあるのだという。ホストたちは23時頃に起床して準備し、同伴がある場合は居酒屋やカラオケ、漫画喫茶などで同伴をしてから朝出勤する。
ルイさんは担当に23時頃モーニングコールをして、深夜の2時〜3時までLINEに付き合い、寝不足のまま仕事に行っていた。