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私が好きになれるのはバンドマンだけ……? 33歳女性ライターにかかった「呪い」

それでも好きになるのはやっぱりバンドマン

 そこから6年間彼氏がいなかった。でも、彼氏はいなくとも好きな人はできた。これもまたバンドマンだった。私がライターとなり、2018年に本を出版したら、10年ほど前に好きだったバンドのメンバーからTwitterで出版祝いのDMが届いた。まさか祝ってもらえるとは思わずびっくりし、そこからDMのやり取りを重ね、LINEの交換に至った。真面目に働いて家族を大事にする姿に、私はすぐに彼のことを好きになった。 
 ただ、彼は家庭の事情で地方に住んでおり、ライブの際は新幹線で上京する生活を送っていた。私が彼に会えるのはライブの日やライブ数日前のリハーサルの日のみ。そして、最終の新幹線をホームで見送る20分のみ。新幹線に乗り込む際は必ずハグとキスをしてくれた。私は恥ずかしくてたまらなかったが、そのときは女性ホルモンがガンガン出ていたと思う。一度だけデートしたが、たった4時間しか時間をとってもらえなかった。食事と新宿をうろついただけなので体の関係も持っていない。
 そうしてだんだんと彼からのLINEが少なくなっていき、最終的に振られた。私も精神的な障害を持っているが、彼も精神的に不安定な日があるので、付き合うとお互い共倒れになってしまうから、というのが理由だった。
 その彼には2年間も振り回され続けた。会いたいと言っても「今、仕事で人が足りなくて忙しいので落ち着いてから」と何度も言われ、なかなか会ってもらえなかった。ようやくデートの約束を取り付けられた際も前日に「同僚のお母さんがガンになって同僚が病院に付き添いたいと言っているのでシフトを交代してあげたい」とドタキャンされた。他にも何度ドタキャンされたかわからない。振られた日は新宿二丁目の行きつけのゲイバーに行って店子(従業員)に話を聞いてもらい、帰りの電車で号泣した。電車内で号泣している女がいても誰も気に留めないのが東京のいいところでもある。

イラスト:にくまん子
イラスト:にくまん子

「ダメ恋」はやめられるのか?

 私は男運が悪い。いや、正確に言うと男選びが壊滅的である。いつもボロボロに傷ついて終わる。それは発達障害の特性が故な部分もあるのだろう。発達障害女子の恋愛の特徴としては、言われた言葉の裏を読まずにそのまま受け止めてしまい相手の思うがままにされ、時にはモラハラやDVを受けてしまったり、衝動性からその場の勢いでよく相手のことを調べもせず男性を選んでしまったりする。そして、自己肯定感の低い女子も多いので、「こんなダメな私を思ってくれるなんて」と、悪い男に引っかかったりしてしまいがちだ。
 
 こうやって私は「ダメ恋」をやめられない。きっと、自分に自信がないのと発達障害特性でできないことが多く、「傷つけられるのが当たり前」の環境で育ったせいで、自ら自分を傷つける人を選んでいるのかもしれない。次こそは幸せになるために、自分を大切にしてくれる男性を見極める力をつけていきたい。

どうしても「バンドマン」から逃れられない姫野さん。それが自分の「勝ちパターン」というわけでもないようですが、現在進行形の恋愛もバンドマンがお相手とのこと。次回からは、姫野さん同様に「ダメ恋」に悩み、苦しみながら、幸せな生き方を模索している発達障害当事者の女性のお話を聴いていきます。

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新刊紹介

姫野桂

ひめの・けい
フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)、『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)、『生きづらさにまみれて』(晶文社)がある。

Twitter @himeno_kei

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