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私が好きになれるのはバンドマンだけ……? 33歳女性ライターにかかった「呪い」

ヴィジュアル系バンドマンに乗り換え

 そんな彼との別れの決定打は、私がヴィジュアル系バンドにハマり過ぎたことだ。デートよりもライブを優先した。彼よりもバンドマンのことが好きだった。そうして、当時mixiの日記に一部の友人のみ限定公開で彼の愚痴を書いていたら、とある裏切り者がまるまるコピペをした文章を彼に送りつけたのだ。彼は泣きわめき、私を殴りつけた。私はもうこれ以上一緒にいたくないと言って、半ば強引に別れられることになった。
 これで自由にライブに行けると嬉しさでいっぱいだったが、彼からは1年半くらいネット上でストーキングされていたし、3年くらいは誕生日に毎年おめでとうメールが届いたが一切無視していた。しかし、そんな彼も社会人となって新たな女性と出会い、無事結婚したと風のうわさで聞いた。
 
 ヴィジュアル系バンドにどハマリした私の恋愛相手はバンドマンへと進化した。もともと、初恋が小4の頃、GLAYのJIROちゃんだったので、昔からその気はあったのだろう。しかし、バンドマンは付き合ってはいけない男の3Bに入っている(女性と接する機会の多い仕事。バンドマン、バーテンダー、美容師のアルファベットの頭文字をとったもの)。バンドマン、特にヴィジュアル系バンドマンと付き合うのは表立ってしまうとバンドのイメージを損ねかねないので、彼女がライブや打ち上げにいて当たり前のパンクバンドなどのジャンルと比べて、バレるのはご法度となっている。

 初めてバンドマンと付き合ったのは21歳の頃。当時おっかけていたバンドのメンバーからmixiのメッセージでアタックされて付き合うことになった(私は、他のメンバーにガチ恋していたのだが……)。しかし、憧れのバンドマンから連絡がきたことで浮かれて付き合ってしまった。彼は同い年だったが、お金がなかった。そう、売れないバンドマンは貧乏暇なしなのだ。
 恋愛経験のなさ過ぎた私は、付き合う先には結婚があると思いこんでいた。両親も初めて付き合った者同士の結婚だったし、元カレからもよく結婚を迫られていたからだ。それで、結婚願望があるかどうか彼に聞いた途端、彼の顔が曇り「重い」と言われて振られてしまった。

唯一の“良い彼氏”を怠慢で失い……

 次に付き合ったバンドマンは唯一良い人だった。しかも、私の本命バンドマンだったのだ。すっと通った鼻筋にくりっとしたリスのような目。そしてどこかフェミニンな雰囲気。私は彼の容姿に一目惚れした。そして、3年間ファンレターという名のラブレターを出していて、最初の頃は返信ももらっていた。東日本大震災が起こって余震におびえていたときは、彼自らSkypeのアカウントを公開し「不安な人は通話しますよ」と、一晩中起きていて不安な気持ちを聞いてくれた。
 ところが、彼のバンドがある日活動を休止してしまった。活動休止してしまったらライブがなくなってもう会えなくなってしまう……。そんな悲しみにくれていた中、奇跡が起こった。彼から喫茶店デートのお誘いのメールが来たのだ(チケット購入の手続きなどで彼は私のメアドを知っていた)。小躍りするほど嬉しかったが、同時に遊ばれないかとの不安もあった。しかし、そんな不安はすぐにかき消された。3回目の喫茶店デートのとき、彼は真剣に私に告白してきたのだ。もちろん答えはOK。彼はきちんと働いていてお金の管理もしており、デート代は必ず出してくれた。
 次第に私はそんな優しい彼に甘えすぎるようになる。化粧がめんどくさくて常に部屋着ですっぴんのお家デート。そして、なぜか体の相性が悪かった。彼とセックスすると性交痛が走る。最初の頃は我慢したり、ゆっくり動いたりと工夫していたが、そのうちセックスレスに陥った。私は、愛があるならセックスなんてしなくていいとあまり気にしていなかった。それに、彼もセックスを強いることはなかった。
 別れた原因はセックスレスだけではなく、私の寝起きが悪く彼が家に泊まったときにお見送りできなかったり、彼のシェーバーを私が充電していなくて無精髭のまま会社に行かせてしまったりと、小さな不満の積み重ねにより彼の気持ちがどんどん離れていった矢先、彼が他の女性バンドマンから告白され、振られてしまった。今思えば、話も趣味も合わず、価値観も違ったので、別れて良かったのだと思う。
 私はこの彼のことを何年も引きずっていた。一度だけ彼と箱根温泉に旅行に行った。そのときに撮った思い出のツーショットの写真を今でもたまに見返している。

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姫野桂

ひめの・けい
フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)、『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)、『生きづらさにまみれて』(晶文社)がある。

Twitter @himeno_kei

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