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ダメ恋やめられる!? 〜発達障害女子の愛と性〜

言葉よりも楽だし早い——私が体の関係から入る恋愛を選ぶ理由

セフレ、二股、ヒモ、ホス狂い……「ダメ恋」をやめられないのは、私に男を見る目がないから!?
『私たちは生きづらさを抱えている』『発達障害グレーゾーン』などの著書があるライターの姫野桂さんが、発達障害女性たちの恋愛事情に迫るルポ連載。
前回は著者・姫野さんのこれまでの「ダメ恋」が明らかになりました。
ほかの発達障害女子はどんな恋愛をしているのだろう――。
そこで、今回は発達障害女子のエリカさん(仮名・32歳)に今までの恋愛について話を聞かせていただきました。

 旅行にでも行くのかと思わせるような大きなキャリーケースに、これまた大きくパンパンに膨れ上がったトートバッグ2つという、まるで家出少女のような出で立ちで現れたのは、発達障害当事者でデリバリーエステ店勤務のエリカさん。化粧っ気はないが整った顔立ちだ。なぜこんな大荷物なのか尋ねると、朝起きられなくて遅刻することがあるため、自宅に帰らずそのまま店に泊まることが多いからだという。
 今、都内では風俗嬢が多すぎて稼ぎづらくなっており、関西や東北に出稼ぎに行くこともあるそうだ。期間限定と謳うことでお客さんが付きやすいメリットがあるのだとか。それでも収入は月に20万円程度で、普通の事務職OLと同じくらいだ。景気の悪さがもろに影響していることがうかがえる。

言語によるコミュニケーションが苦手なため、体の関係から恋愛が始まる

 エリカさんは人とコミュニケーションを取ることが難しい場合があることに悩んでいた21〜22歳のとき、発達障害に関する番組を見たことをきっかけに自分もそうなのではないかと思いクリニックを受診。最初に受診したクリニックでは発達障害ではないと言われたが、その診断に納得がいかず別のクリニックを受診し、発達障害と診断された。

 エリカさんは常に彼氏が途絶えない。この「彼氏が途絶えない」というのは、発達障害女子によく見られる傾向だ。男性に言い寄られると断ることができず流されてしまいがちなのだ。しかし、エリカさん本人には流されてしまっているという自覚はなく、いつの間にか恋人の関係になっていることが多いと語る。そのため、前の彼氏との関係が完全に終わっていないのに新たな彼が登場し、実質二股状態になることもよくあり、円満に別れられたことの方が少ないという。なかなか別れを切り出せないのだろうか。それともなかなか相手が別れを承諾してくれないのだろうか。その問いに彼女は言葉を絞り出すようにこう答えた。

「いつまでも関係を続けさせられているというより、そもそも付き合っているかどうかわからない、微妙な期間が続いてしまうんです。パートナーとしては既に機能を失っているので、そろそろきちんと別れを切り出そうとしたときには、既に新しい相手との展開が始まっているというか……」

 始まりの段階からあいまいなせいで、別れを切り出すタイミングを掴めないような印象を受けた。物事の決断に時間がかかってしまうようにも捉えられる。また、彼女の場合、恋愛は体の関係からスタートすることが多いのも大きな特徴の一つだ。

「私、言語によるコミュニュケーションが苦手なので、どうしても体の関係から入っちゃうんです。特別性行為が好きというわけではないのですが、体を切り口にした方が人とうまく関われるんです。体から入った方が楽だし早い。だから、気づいたらお付き合いが始まっていた、みたいな。こういう話をすると『断ることができなかったんですね』と言われるのですが、そうではなくて、断るという機能が最初から備わっていないというのが近いと思います」

イラスト:にくまん子
イラスト:にくまん子

 一見すると「ヤリマン」と思われがちだが、私は彼女のことを決してヤリマンだとは思わない。「共通の趣味」や「フィーリング」といった言葉で表されるのは言語によるコミュニケーションのことで、定型発達の人の恋愛は通常このパターンで始まると思われるが、エリカさんの場合、発達特性により体から入らざるを得ないのだ。
 エリカさんは発達障害の人が集うコミュニティやイベントに顔を出し、そこで出会った人と肉体関係に発展することが多いという。しかし、体目的で参加しているわけではなく、素を出しても大丈夫な場所を求めて自然とそこに行き着いたそうだ。

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姫野桂

ひめの・けい
フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)、『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)、『生きづらさにまみれて』(晶文社)がある。


Twitter @himeno_kei

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