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私が好きになれるのはバンドマンだけ……? 33歳女性ライターにかかった「呪い」

セフレ、二股、ヒモ、ホス狂い……「ダメ恋」をやめられないのは、私に男を見る目がないから!?
発達障害当事者で『私たちは生きづらさを抱えている』『発達障害グレーゾーン』などの著書があるライターの姫野桂さんが、発達障害女性たちの恋愛事情に迫ります。
初回は姫野さんご自身の恋愛歴について。ある「非常に特徴的な男性の好み」が明かされます。

 みなさんはじめまして。はじめましてではない方、いつも私の文章を読んでいただきありがとうございます。はじめましての方に向けて少々自己紹介をば。
 私は発達障害当事者や「生きづらさ」をメインに取材しているライターの姫野桂。私自身も発達障害当事者だ。年齢は33歳で独身。一人暮らしで1匹の猫と都内で暮らしている。趣味は読書と映画鑑賞。苦手なことは恋愛だ。

 私の恋愛遍歴はひどいの一言だ。歴代の彼氏4人のうち、唯一まともと言える男性とは一人しか付き合ったことがない。
 近年、『鬼滅の刃』や『シン・エヴァンゲリオン』のメガヒットなどで、オタクは市民権を得てはいるものの、私が中高生の頃はアニメやマンガ好きはスクールカーストの底辺に属していた。私は当時、特にアニメやマンガに興味はなかったが、親からスクールカースト上位の子たちと交流するのを嫌がられたのと、上位の子たちとうまくコミュニケーションを取れず、ときには「キモい」と嘲笑されることがあったので、スクールカースト底辺に属するしかなかった。アニメやマンガの話にはついていけないものの、底辺の子たちは私を攻撃したりはしない。高校卒業までずっと私は底辺にいた。とてもみじめな中高生活だった。だから、大学に進学したら生まれ変わって素敵な彼氏と付き合うことを夢見ていた。

大学デビューを狙って上京し掴んだ彼は、AVオタク

 しかし、私が進学したのは訳あって女子大。出会いがないため、インカレサークルに入って男性を探すことにした。ところが、いいなと思うイケメンにはみんな既に彼女がいた。そこで私は「彼氏」という記号が欲しいという思いが爆発してしまい、今だったら完全にセクハラ案件なのだが、飲み会のときに私の脚をスリスリと触ってきた冴えない他大の大学院生と付き合うことにした。全く好みでもないし好きという感情はなかったが、一緒に過ごしているうちに次第に情が湧いてきた。
 彼は、当時にしてもジェンダーや男女平等という考え方に関してとても疎い人だった。AVが大好きな童貞で、AVを性の教科書にして鵜呑みにしており、私にAVと同じようなことをさせたがり、私も処女だったので知識がなく、痛みを伴うし衛生面でも汚い行為を嫌々ながら受け入れてしまった。ときには寝込みを無理やり襲われたこともあった。これは合意のない性行為なので恋人同士であってもレイプだが、彼の言い分としては「お尻をプリッと突き出した体勢で寝ていたので、襲ってほしいのだと思った」と。なんという認知の歪み。

 彼は実家暮らしだったが、私が当時住んでいた6畳ワンルームの部屋に入り浸るようになり、プライバシーのなさに日々苦痛を感じていた。また、二人で生活しているのでお米の消費量が半端ない。光熱費も倍になる。それなのに彼は私に一銭もお金を払わなかった。
 これに対して私は、初めてできた彼氏だったので、男女交際とはこういうものなのだろうと文句は言わなかった。彼は昼夜逆転の生活を送っており、昼過ぎ頃起きて大学の研究室へ行き、一晩中研究したり、友達と朝まで高田馬場で飲んで、当時私が住んでいた目白まで歩いて私の部屋に来てチャイムを鳴らす。私はそれにも応じて眠い目をこすりながらドアを開けた。
 大学1年生だった私は必修科目が多く、ほぼ毎日1限から6限まで講義が入っていたので、45分間の昼休みの間にダッシュで家に帰って彼を起こして見送って部屋の鍵を締め、またダッシュで大学へ戻るという生活をしていた。午後の講義の始まる頃は毎回息切れで肩を上下に揺らしていた。朝方は睡眠を妨害されるし昼休みもほぼなくなっていた。今思うとそこまでする必要はないし、なぜあんなに彼のお世話をしていたのかがわからない。それが男女交際だと思いこんでいたのだ。

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新刊紹介

姫野桂

ひめの・けい
フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときにライターに転身。現在は週刊誌やウェブなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)、『「発達障害かも?」という人のための「生きづらさ」解消ライフハック』(ディスカヴァー21)、『生きづらさにまみれて』(晶文社)がある。

Twitter @himeno_kei

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