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稲田ズイキ「罰当たりなほどにユルくてポップな仏教トーク」

南無阿弥陀仏=永ちゃんコール? 念仏とはライブの声援である

坊主なのに煩悩まみれ。
そんな俗世と浄土を行き来する、ユル〜い僧侶・稲田ズイキがお届けする仏教トーク。

前回は「神と仏の違い」をアイドルとゆるキャラにたとえて説明しましたが、今回は、日本人なら、嫌でもどこかで聞いたことのあるフレーズ「南無阿弥陀仏」について。たった六文字に、ものすごいパワーが込められているのです。

突然ですけど、みなさん「念仏」とは何かご存知ですか?
ね、ネン、ブツ……? そんな人生で初めてウーパールーパーという単語を耳にした時のような顔をするのはやめてください。

だったら、「ナムアミダブツ」「ナンマイダー」ならば聞いたことがあるのでは?
そう。あの、僧侶がよく言ってるアレです。アレを「念仏」というのです。「馬の耳に念仏」とかで聞いたこともあるはず。

とはいえ「念仏とは何か?」って言われても、ボヤァとしてますよね。
そこで、「ちょっと何言ってるかわからない」という方、ぜひ好きなアーティストのコンサートに行ってみてください。さすれば、念仏とは何か理解できるはず。

そう、念仏とは熱烈なファンたちが繰り広げる、コンサート中の「ある行為」に実に似ている。

コンサートでの“高まり”が名前を叫ばせる

一度でも好きなアーティストのコンサートに行ったことのある人ならば、想像してみてほしい。

朝目覚めたときからなんだか浮き足立った気分で、仕事中も「今晩はあの人に会える」なんて期待を胸に上司の小言を右から左へ流しながら、退勤後せかせかとライブ会場に向かい、Tシャツからタオルからリストバンドまで公式グッズに身を染めて、「いつ始まるんだろう……」とジリジリ登場を待つ、あの永遠のような数分間。そして、ついに、ステージの幕が開き、スポットライトが当たって、人影が映し出され、あなたが口に出すのは、

○○〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」 でしょ?

○○には「永ちゃん 」でもいいし「洋次郎」でもいいし「聖子ちゃん」でもいいし「かなこおおおおおお⤴️⤴️」でもいいし「CHAGE」でもいい。

とにかく名前を叫ぶだろう。ここでどんなに嬉しくても「アメイジング!!!」と叫ぶファンはいない。
コンサート中はアーティストの名前を叫ぶものだ。もはや、名前を叫ぶのがファンの唯一の仕事と言ってもいい。別に誰に頼まれた訳でもないけど、名前を呼ばずにはいられないのが、ファンというものなのだ。

ある種の“高まり”が、あなたを叫ばせているのは確かだ。その高まりとは、目の前に現れた「神」にも等しい存在に一瞬でも目にとめてもらいたいという感情かもしれないし、今日上司に怒られたけど、あなたのおかげで浄化されてブチ上がれるありがとうううううという感情かもしれない。

ビートルズが来日した時は、ファンがあまりの感激のために失禁してしまったという話を聞いたことがある。ときに“高まり”は膀胱にまで影響を及ぼす。恐ろしい。
熱烈なファンにとって、ライブ中のアーティストとの出会いは一種の宗教的体験に近いと言っていいだろう。そんな大いなる存在と僕らを結びつけるのが「名前」なのだ。

あゆ〜〜〜〜〜〜〜〜!!
ヒデキ〜〜〜〜〜〜!!

古今東西、ファンは名前を叫んできた 。アイドルの現場だと雄叫びを通り越し、奇声がこだましている。

そんなコンサートでの光景を見て、僕は毎回思っている。

これ、南無阿弥陀仏じゃん、念仏じゃん」って。

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稲田ズイキ

いなだ・ずいき●僧侶。1992年京都の月仲山称名寺生まれで現・副住職。同志社大学を卒業、同大学院法学研究科を中退、その後デジタルエージェンシー企業インフォバーンに入社。2018年に独立し、寺に定住せず煩悩タップリな企画をやる「煩悩クリエイター」として活動中。コラム連載など、文筆業のかたわら、お寺ミュージカル映画祭「テ・ラ・ランド」や失恋浄化バー「失恋供養」、煩悩浄化トークイベント「煩悩ナイト」などリアルイベントを企画しています。フリースタイルな僧侶たちWeb編集長。Twitter @andymizuki
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竹内佐千子

たけうち・さちこ●漫画家。おっかけ対象が男子で恋愛対象が女子のレズビアン。
自身の恋愛体験を描いたコミックエッセイをはじめ、おっかけ、腐女子、などをテーマにしたコミックエッセイを描き続け、最近はストーリー漫画も描いている。
赤ちゃん本部長』(講談社)、『生きるために必要だから、イケメンに会いに行った。』(ぶんか社)など。
ホームページhttp://takeuchisachiko.jp/
Twitter @takeuchisachiko

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