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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

突如オシャレ快進撃をはじめたロングセラー虫刺され薬・キンカン

キンカンが、昨年から突如オシャレ快進撃をはじめていることをご存知だろうか?
キンカン塗って、また塗って〜のCMソングでおなじみの、日本を代表するおばあちゃん系虫刺され薬。
1926年創業の老舗、金冠堂がつくるあのキンカンが、である。

2019年には、「KINKAN SUMMER COLLECTION 2019」と銘打ち、ファッションブランドのようなプロモーション企画を実施。
外国人モデルがキンカンを塗る瞬間でポージングした、オシャレすぎるポスターを渋谷の街に大量掲出して話題になった。

そして今年2020年。
昨年に引き続き、ハイブランド風広告を展開するとともに、長年親しまれた黄色のパッケージに加え、中身は普通のキンカンと同じながら、スタイリッシュな黒い外装を施した「KINKAN Noir(キンカンノアール)」を新発売。

本来であれば今年はさらに、渋谷パルコにオシャレなポップアップストアを出店する計画だったそうだが、コロナの感染拡大防止の観点からやむなく中止に。
コロナに水を差されてしまったものの、キンカンの前のめりなガチ姿勢は十分に伝わってくる。
なんでもユーザーの高齢化に対し、若返りをはかるための施策なのだとか。

100年単位で語られる外用薬の効き目は実はかなり万能なのである

僕はこうしたキャンペーンが展開される前から、日本が誇る虫刺され薬の決定版としてリスペクトし、キンカンを愛用してきた。
非常に蚊に刺されやすい体質の僕にとって、虫刺され薬は夏の必携品。
長年にわたって様々な商品を使ってきた末に、本当に頼りになるのはキンカンであるという結論に至ったクチなのだ。

そもそもキンカンとは?
実はキンカンは、発売元の創業以前である1925年に誕生した薬。キンカンを発売する目的で設立された会社が金冠堂というわけだ。
舞鶴の海兵団で衛生兵として働いた山崎栄二氏が除隊後、軍での経験を活かしてはじめた研究の結果、生み出した万能外用薬キンカン。
氏が外用薬の研究をはじめたのは、姉の子供が大火傷で亡くなったことがきっかけだったそうだ。
だから1925年に発売されたキンカンの当初の主な効能は、火傷や外傷。
第二次世界大戦中にも、火傷・外傷用救急薬として活用され、戦後は主に虫刺されや肩こりの効能を強調して販売を伸ばしたという経緯がある。

メンソレータムやタイガーバームも同様だが、100年規模の歴史を誇る外用薬は、“万能薬”として開発されていることが多い。
薬事法などの制約から現在は効能を絞っているものの、自己責任で使うという条件なら結構なんにでも効く薬と考えて間違いない。
僕の体なんて大雑把にできているので、キンカンとタイガーバーム 、メンソレータム、そしてオロナインがあれば、大概のトラブルに対応できたりする。

兎にも角にも、突如オシャレ展開をはじめたキンカンからは目が離せない。
僕はますます注目していて、この時期の外出には、必ずポケットに忍ばせているのです。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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