そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。
2020.8.4
ガラパゴス化が心配な筆記具界で生き残る、愛すべきロングセラー
特に買うものがなくても、文房具屋さんの中をあれこれ見て回るのが好きだ。
見るたびに新しい発見があってワクワクする。
文房具、特に筆記具の世界は奥が深い。
総じて言えるのは、海外製の筆記具は何十年も変わらぬ形で販売されている定番ものの価値が高く、日本製は逆に、各文具メーカーが凌ぎを削るように開発している、最新鋭機種がプッシュされているということだ。
シンプルなように見えるボールペンやサインペン、シャープペンシルの世界でも、真面目な日本のメーカーは日々、新しい機能を盛り込もうと努力していて、シーズンごとに新型モデルが大量陳列される。
中には世界を席巻するベストセラーとなったパイロット・フリクションのような画期的商品もあるが、細かな新しい機能性がちょこちょこ追加される日本の筆記具を見ていると、少し心配になってくる。
サインペンにこれ以上の機能性は本当に必要?
ボールペンって、もう完成形ということでよくない?
芯が折れないシャープペンシルって、むしろ気持ち悪くない?
そんな風に思ってしまう。
携帯電話と同じで、筆記具の世界もこのままいくとガラパゴス化が進行し、メーカーが疲弊してしまうんじゃなかろうか。

廃盤にすることなくずっと売り続けてほしいと願ってやまない懐かしペン
そんな最新鋭機種がひしめく筆記具界だが、面白いのは僕が小中学生の頃に使っていたような、懐かしペンも並行して販売されていることだ。
機能満載の最新鋭モデルに若干の疑問を抱いている僕は、ついそっちの方に手が伸びる。
陳列棚の端っこの方に追いやられながらも、廃盤にならずしぶとく売られ続けているのは、きっと僕のような考え方を持つ人も多いからだろう。
手持ちの筆記具の中から、ロングセラーモデルを5本ピックアップしてみた。
上から順に、ぺんてるの水性ペン「プラマン」(since1979)、水性ボールペンの「ボールPentel」(since1979)、サインペンの代名詞になった「サインペン」(since1963)。パイロットの細字用サインペン「プチ」(since1979)、そしてスーパーカー消しゴムとセットでヒットした三菱鉛筆のノック式ボールペン「BOXY」(since1975)だ。
これらの商品の多くは長い販売歴の中で、中身の機能性もデザインも、ユーザーが気づかないほどの細かな改良が施されていまに至っているらしいが、佇まいはいずれも昔使っていたまんまなのが嬉しい。
愛すべきロングセラー筆記具。
頑張ってこの先もずっと作り続けてほしいと願う。
僕は懐かしペンだけ選び、これまた懐かしい缶ペンケースの中にしまっている。
僕らが中高生のころ、めちゃくちゃ流行った缶ペンも、いまはほとんど売られていない。
そりゃあそうだ。アレは授業中に落とすと、すごくうるさいからな。
ああ、懐かしい。