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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

モヤモヤした気持ちで導入したお犬様用ベビーカーはとても便利だった

小学4年生のときに飼いはじめた柴犬は、犬小屋を置いた庭で放し飼いにしていた。
昭和50年代、お座敷犬と呼ばれたマルチーズやヨークシャテリアのような限られた犬種以外は、外で飼うのが当たり前だった。
ドッグフードなんてほとんどやったことはなく、母が残飯にバターと味噌汁なんかをぶっかけて煮込んだものを与えていた。
肉屋さんでもらった牛の骨をあげると大喜びでかじり、食べきれないと庭の隅に埋めて熟成させ、たまに掘り出して勝手に食べていた。
いま考えると、ずいぶん野生味があったな。

柴犬亡きあとに飼い始めたキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは、最初から室内飼いをしていたし、エサは基本的にドッグフード。
だいぶ近代的な飼育法に近づいた。
でも昔からの癖で、親が人間のお菓子、それも大福とかケーキとかまでホイホイあげちゃうから、晩年はかなり太っていた。
もともと大人しい犬だったが、歳をとってからは散歩もあまりしたがらず、家の中に引きこもってゴロゴロと暮らしていた。

そして4年前から、トイプードルとヨークシャテリアのミックス犬(通称“ヨープー”)を飼っている。
最近はペットに対する人々の意識がすごく高まっているので、人間のものを与えてはいけない、アレをやっちゃいけないコレをやっちゃいけないとやたらうるさい。
もちろん、犬には健康的な一生を送ってもらいたいので、「良い」と言われることはなるべく実践しているけど、昔飼ってたアイツらなんてとても適当だったのに、元気で楽しそうに15年以上も生きた。
それを思うと少し複雑な気分になる。今はペットに関しても少し情報過多なのかもしれない。

そういえば先日、13歳で死んだ秋田犬のわさおのニュースを見た。
わさおの飼い主は、青森の焼きイカ屋さん。
テレビは生前のわさおの様子を流していたけど、飼い主のおばあちゃんが投げ渡した、丸ごと一匹の焼きイカをうまそうにムシャムシャと食べていた。
最近のペット界の常識では、イカは犬にあげない方がいい食品と言われているのに……。
やっぱり平気なんだな。
そういえば柴にもキャバにも、自分のおやつのチョコレートを分けてあげてたもんな。
今では、犬には絶対NGと言われているチョコレートを。

真夏の外出用に渋々買ったが、今では手放せない必需品に

犬をベビーカー風のペットキャリーに乗せて歩いている人を初めて見たのは、何年くらい前だったろうか。
衝撃を受けた。
だって犬だよ。ドッグだよ。
なんで歩かせないんだ。
内心、「この人、頭大丈夫か?」と疑ったものだ。

でも我が家のヨープーちゃんのために、うちも昨年からベビーカー風ペットキャリーを使っている。
最初は夏場だけのつもりだった。
足が短く、アスファルトの路面に体が近い小型犬は熱中症にご注意を、という記事をたびたび見るようになったからだ。

最近の都会の真夏の暑さは半端ない。
アスファルトに手をあててみて、5秒耐えられない熱さだったら要注意と聞いて実践してみたら、真夏は朝からダメだということがわかった。
こんな焼石の上を歩くのは、確かに苦痛でしかないだろう。
大人しく引きこもり気味だったキャバとは違い、ヨープーはものすごく活発で、真夏でも外に行きたがる。
これはベビーカー(風ペットキャリー)しかないな、と思い至ったわけだ。

それでもやっぱり抵抗があった僕は、ネットで検索した最安値のものを購入することで心に折り合いをつけた。
確か5000円くらいだったと思うが、これが予期せず大正解だったのだ。
安物のドッグキャリーは必要最低限の機能しかないのでコンパクトで軽く、とても扱いやすいのだ。
車のトランクにも簡単に積むことができる。

そしてお犬様の方はというと、ベビーカーでの散歩が楽しいらしく、真夏ではなくても積極的に乗りたがる。
僕としては本意ではないのだが、まあ、これはこれでいい買い物だったのかもしれない。

特に便利なのは食事に行ったときだ。
最近は、犬と一緒に入れるカフェやレストランも多くなった。
そういう店でも人間用の椅子の上に乗ることはもちろんご法度で、基本的に犬は足元につないでおくルール。
でも下につないで放置し、家族が食事をしていると、うちの犬はウロウロと落ち着かない。
隣の席のお姉さんのお尻を嗅ぎにいったり、向かい席の犬を威嚇しにいったりしてしまう。
そこでベビーカーに乗せ、人間の椅子の隣に並べておく。
すると家族の顔が見えて安心するのか、のんびり寝て待っていられるのだ。

昭和40年代生まれのおじさんとしては、最近の過保護ペットは異様なものに感じることも多いが、いいものはいいと認めなければ。
かわいすぎる我が家のワンコの幸せのために。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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