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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

GUのシンプル至極な“シェフパンツ”をはいて、往年のマイク・タイソンを思う

その後のしっちゃかめっちゃかぶりでわけのわからないことになったが、僕が高校生の頃、つまり1980年代中頃〜後半の世界で、突如現れた最強無敵の若きヘヴィー級チャンピオン、マイク・タイソンの人気は絶大だった。
何しろ、1985年にプロデビューして以来、すべてKOかTKOで19連勝。
判定勝ちも含めるとその後も連勝街道は続き、あっという間にWBA、WBC、IBFの統一チャンピオンに。
1990年のジェームス・ダグラス戦でKO負けを喫するまで、無傷で怒涛の37連勝を果たしたのだ。

その後、レイプ事件での告発・収監を経て1995年に復帰。
一時は再びWBAとWBCの王者になるも、1996年にイベンダー・ホリフィールド戦で人生2度目のKO負けを喫してWBAの王座陥落。
翌1997年におこなわれたホリフィールドとのリベンジマッチで、劣勢の挙げ句に例の耳噛み事件を起こして失格負けに。
以降は複数の暴行事件を起こしたり、顔に悪魔のような刺青を入れたり、K-1への出場契約をするも過去の犯罪歴から入国拒否となって実現しなかったりという騒動があり、2005年に事実上の引退をしている。

プロ戦績は58戦中50勝(44KO)6敗、2無効試合。輝かしい成績だが、数字的な記録だけで言えばもっとすごい選手もいる。
ただ、圧倒的に記憶に残る、唯一無二のとんでもないボクサーだったことは間違いない。

真っ黒で統一されたコスチュームも、タイソンを格好良くみせた要因だった

日本でも海外でも、強いボクサーが元はストリートファイトでならしたド不良だったという例は多い。
タイソンは幼少時、鳩だけが友達のいじめられっ子だったがやがて非行に走り、ニューヨークでも最悪の少年が収監される少年院に入る。
そこでの更生プログラムの一環としてボクシングを習い、すぐに頭角を現した。
矢吹丈でおなじみの、少年院からの成り上がりパターンだったのだ。

えっと。
何を書こうとしているのかというと、全盛期のタイソンのリングコスチュームについてなのだ。
ヘヴィー級の中では178cmと小柄で、対戦相手と比べると見劣りする体格のタイソンだが、彗星のごとく現れた80年代当時、その姿はとにかく格好よかった。
引き締まった筋肉の塊といったボディに、真っ黒のパンツ、それにリングシューズというより普通のレザーブーツのように見える、短めの黒いシューズがよく似合っていた。
カラフルなパンツやシューズを選ぶ選手が多い中、その抑制的な黒一色のコーディネートは、タイソンの不気味なほどの強さを表しているようだったのだ。

最近GUで買った、前開きのファスナーもなくポケットも目立たないシンプル至極な“シェフパンツ”という真っ黒ショートパンツ。
思いのほか気に入った僕は、「なんか、あの頃のタイソンみたいでいいじゃん」と一人悦に入っているのだ。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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