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佐藤誠二朗「グリズリー世代のバック・トゥ・ザ・ストリート」
グリズリー……それは北アメリカ北部に生息する大きな灰色のヒグマの名であると同時に、白髪交じりの頭を形容するスラング。頭にちらほら白いものが目立ち始める40~50代を、アラフォー、アラフィフといってしまえば簡単だけど、いくつになってもオシャレと音楽が大好きで遊び心を忘れない彼らを「グリズリー世代」と名付けよう――
そんな思いを胸に、自身もグリズリー世代真っ只中の著者がおくる、大人の男のためのファッション&カルチャーコラム。

サーファー御用達だけど、ロックオヤジにも響くアイランドスリッパ

昔、仕事で付き合いのあった、ある会社の社長さん。彼は僕と同類のパンク好きだったので、仕事の枠を越えていろいろと話をすることが多かった。
その人は元アイドルのキラキラした女性と結婚したのだが、あまりにも趣味が違いそうなので、一体どんなふうに暮らしているのか聞いてみたことがある。
すると「家の中は、ぱっきり二色に分かれてますよ。僕の領域はスカルばっかりの超パンクテイストで真っ黒、彼女の領域はキティちゃんだらけの真っピンク」と言って笑った。

我が家の場合、僕はパンクとかハードコアとかオイとかモッズとかマンチェスターとかスカとかが好きなロック馬鹿野郎だけど、妻は昔からフラをやっていて、ハワイ&ビーチリゾートなテイストが大好き。
そして我が家の一人娘は妻に洗脳され、ハワイアン娘になりつつある。
家庭を持ったロックオヤジは、孤立無縁になりがちなものだ。

家庭円満のためには、妻・娘という史上最強タッグに逆らうべきではないと、すでに先賢たちによって証明されている。
本当の趣味嗜好は、脳内と限られた自分のスペースにとどめるしかない。
だから我が家の基本インテリアは、ハワイ&ビーチリゾートテイストなのだ。

ファッションについては固守すべき領域だが、やはり、ところどころに妻の好みが侵食してくる。
以前、ハワイ旅行に行った際に妻から激しくすすめられて買ったこの“アイランドスリッパ”もそのひとつ。
そのときは何とも思わなかったが、まあ抵抗せずに買った。だが今では、買ってよかったと思っている。
すごく履き心地のいい最高のサンダルだったのだ。
もうかれこれ10年近くは愛用しているだろうか。

日本人移民が作り出したサンダルは、草履に通じるナチュラルな履き心地

アイランドスリッパとは、1946年創業のハワイのサンダルブランド。
創業以来、ホノルルのパールシティという小さな町に構えた自社ファクトリーで、デザインから製造までのすべてをおこなう、“純Made in Hawaii”なサンダルだ。

ロコのサーファーからセレブまで愛用者が多いことで知られるアイランドスリッパ。
上質な皮革を原材料とし、ひとつひとつハンドメイドで作られているため、お値段はまあまあ高め。
僕は現地で買ったので、日本で買うよりは安かったと思うけど、日本円で確か1万円ちょっとだったと思う。

ブランドのHPを見ると、日本人移民の本永瀧蔵さんという人がサンダルの原型を作り、息子のエドワード・モトナガ氏が事業を拡大したブランドなのだそうだ。

僕の持っているアイランドスリッパは、肌に吸い付くようなしっとり柔らかいレザー製で、その表面には南国っぽい模様が型押しされている。
日本人が作っただけあって、どこか草履に通じるような、ナチュラルでオーガニックな風情が魅力だ。

ところで前述の社長さんなのだが、数年後には離婚してしまった。
やっぱりロックオヤジは主張控えめとするに限るのだろう。

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佐藤誠二朗

さとう・せいじろう●児童書出版社を経て宝島社へ入社。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わる。2000~2009年は「smart」編集長。2010年に独立し、フリーの編集者、ライターとしてファッション、カルチャーから健康、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動を行う。初の書き下ろし著書『ストリート・トラッド~メンズファッションは温故知新』はメンズストリートスタイルへのこだわりと愛が溢れる力作で、業界を問わず話題を呼び、ロングセラーに。他『糖質制限の真実』『ビジネス着こなしの教科書』『ベストドレッサー・スタイルブック』『STUSSY2017 FALL/HOLIDAY COLLECTION』『DROPtokyo 2007-2017』『ボンちゃんがいく☆』など、編集・著作物多数。

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