よみタイ

池尻の“あるよ”な隠れ家BARのセブンルール 〜カビネ

「綾子さんに聞けば間違いない!」――美味なレストランも気の利いた手土産もとびきりのお取り寄せも、おいしいものには死ぬほどうるさいギョーカイのみんなが頼りにするのが、フードパブリシスト高橋綾子のグルメ手帖。誰もがうなる美味の数々を惜しげもなく公開します!

フジTV系ドラマ『HERO』の中で、みんながよく集まっていたBARのこと覚えていますか?
私の中で「カビネ」はそのイメージ。

「昔、タンカレーにオレンジ味がありましたよね、もうなくなっちゃったけど」
「ありますよ」
「冷製パスタが食べたいけど、メニューにないですよね」
「できますよ」
という感じ。

ね、似てるでしょ?
脈絡はまったくないけどフジTV系番組繋がりってことで、今回は私の大好きな番組、『セブンルール』調でいかせていただきます。

周りは住宅なので気をつけないと通り過ぎてしまいます
周りは住宅なので気をつけないと通り過ぎてしまいます

誰しも自分自身に課しているルールがある。

今回の主人公は「カビネ」オーナー・増田晶。
東京、目黒区東山。
田園都市線池尻大橋駅から商店街を抜けて住宅地に入ろうかというところに、柱のメニューがなければおしゃれなガレージと見間違うような佇まいの店が現れる。
どんな様子か灯り窓から覗いてみると、店の人と目が合いドアが開いた。

奥行きもたっぷりある特注の棚にはモルトがぎっしり!
奥行きもたっぷりある特注の棚にはモルトがぎっしり!

圧巻なのは天井までそびえ立つボトル棚。
中には酒好きが泣いて喜ぶ希少なものもあり、それらは中学生で「バーテンダーになっていつか店を持つんだ!」という夢を叶えるために増田がコツコツ買いためてきたものだ。
もうすぐ17年目を迎えるこの増田の店には、予約が取れない神楽坂「メゾン ド ツユキ」の花野敬子シェフやミシュランガイド東京で星を獲得している「クラフタル」の大土橋真也シェフといった名だたる料理人をはじめ、遠方から週に3〜4回通い続けるIT社長やカクテルワールドカップ日本代表のバーテンダーなどが訪れる。

増田晶の7つのルールとは?
セブンルール始まります。

同じ銘柄でも80年代と今では味もボトルもラベルも、シングルモルトという名称すら違う
同じ銘柄でも80年代と今では味もボトルもラベルも、シングルモルトという名称すら違う

1) 売り切れたらメニューを差し替える

モルトは400種以上、ワイン250種類ほど、ジンやテキーラ、マール、グラッパ、フィーヌなどが分厚いメニューブックに記載(モルトは抜栓してあるもののみ)されている。

今回改めて訪れると増田は大量の紙の束をカウンターに置き、黙々とメニューを差し替えていた。
「メニューに書いてあるのに品切れですと言われるのって嫌じゃないですか。だからひとつでも売り切れたらすぐ作り直します。ちょっとでも溜めるともっと大変になるので、なくなった翌日に差し替えます」

話せば話すほど“かっこいい大人”だなと思える増田さん
話せば話すほど“かっこいい大人”だなと思える増田さん

2) 仕事は丁寧に手早く

東京、大田区出身。両親、兄ともに無類の酒好き。
中学生の頃の愛読書は’82年版から毎年買い続けている「世界の名酒辞典」。
BARデビューは昭和24年創業の渋谷「門」だ。
そこで飲んだ「ギムレット」に感動してバーテンダーの道へ進む。

最初に勤めたのは横浜にあったBAR。
厳しい店主について2年間みっちり修業し、その後、「デジャヴ」(原宿の東郷記念館の向かいの地下1階)「アムリタ」(西麻布の伝説のBAR)「ウイスキーキャット」(下北沢)など、17年間かけてバーテンダーとして、店のオーナーとしてのスキルを身につけ、2003年にここ、カビネをオープン。

増田の仕事は丁寧で手早い。
お酒の説明も長くも短くもなく的確。増田を成長させてくれた店のひとつ、アムリタでは1日100kgあまりの氷で100個くらいの丸氷を作り、4〜500杯くらいの酒を出していた。

「お酒を作る時も丁寧に手早くを心がけています。ダラダラした動きは美しくない。アムリタで鍛え上げられました」

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高橋綾子

たかはし・あやこ●フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレス時代から培った〝食″へのこだわりは、舌の肥えた業界人も頼りにするレベルの高さ。年間1000を超えるという外食の日々が築き上げたおいしいもの好きが嵩じて、ついに2018年2月に東京・下北沢にてレストラン「üchï(うち)」をオープン。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。
Facebook→https://www.facebook.com/ayako.takahashi.1671

uchi→http://uchi.tokyo/

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