2019.6.20
料理もサービスも価格も心地よい、ふらりと寄れる“ホーム”なイタリアン〜falò〜
「以前の店では炭火を扱っていなかったので、ここに来てから手探りで火と向き合ってきました。どうしたら“自分の欲しい火”を作れるのか、毎日葛藤でした。やっと手応えを感じたのが半年ほど経った頃。それからは方法がいろいろ閃くようになりましたね」。
今はすっかり火と仲良くなれて、もっと遊びの範囲を増やしているそう。冬になったら鉄の棒を立てて囲炉裏を作り、鍋とか煮込みをメニューに加えるんですって!
それは楽しそう! 話を訊くだけでウキウキしてきます。
超有名リストランテのシェフだったカッシーさんが、まっさらのお店でどんな料理を出そうか考えた時に思い出したのは、子供の頃にただ焼くだけのBBQがすごくおいしかったという記憶。だからコンセプトは「シンプルな料理を作ること」に決めた。
例えばこの鮎。料理人の性っていうのは困ったもんで、これじゃただの鮎の塩焼きじゃないかと、ジェノベーゼソースとかトマトソースをかけたりして、つい手を加えたくなる。そこをシンプルな料理には逆効果と自分に言い聞かせ、何かを足したくなる気持ちを抑えるそうで、これが慣れるまで大変だったそうです。
いちばん食べさせたいものは何か、を皿の上で表現するにはシンプルにするのがいちばん良い……。
その最たるものが鮨や天ぷらで、見た目は握るだけ、揚げるだけなのにこんなにもおいしいのは裏で料理人がとことんまで“仕事”をしているからであり、炭火焼も同じことだとある時、気がついたそう。
見た目は焼いただけでも、下ごしらえや火のコントロールによっておいしさが違う。難しい。
でもこの「シンプルな料理」を極めていきたいのだとカッシーさんはおっしゃいます。
お店の雰囲気の良さもfalòの魅力。一体感があるって前述しましたが、スタッフの連携プレーがとっても心地よいのです。
カッシーさんはお店の真ん中で焼物をしながら、お客さまを含め全体の動きを把握して時々スタッフに指示を出しています。言われてみればおしゃべりに興じて箸が進んでいない時は温かい料理を出すのを遅くしたり、グラスが空きそうになると「次、何か飲まれますか」とスタッフが聞いてくれたりとタイミングが良い。それもこれもカッシーさんが常に360度見渡しているからだったのね。
でも、焼きながら全部を把握するって大変じゃない?と訊くと「僕、あれもこれもできるほど器用ではないので、忙しい時はムッとして“話しかけないでくれオーラ”を出しますよ(笑)。だって話し込んでしまうと肉をひっくり返さないとと思っても話が途切れるまで火のそばにいけないじゃないですか。だからお客さまの手元を見て進行状況を確認しますが、目はできるだけ合わせないようにしています。僕がすべきことはおいしい料理を出すことがいちばん。料理に真剣に向き合うことが料理人のあるべき姿だと思うので、会話はしなくても料理で語ります!」ですって。
そうなのか、ならばカッシーさんと話したいときは遅い時間に行くことにしよう。
オープンして3年が経ち、スタッフはカッシーさん以外、当時とはすっかり変わってしまったけど変わらないのは自分の居場所と思える“ホーム感”なのです。
だからしばらく会っていないとふらりと寄りたくなる。
心のよりどころなんだな、きっと。