2024.4.26
宇宙のレシピを解読する!? 最先端ミッション「XRISMクリズム」を知っていますか?【X線天文学 後編】
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宇宙のレシピを知るというのは、これまでの宇宙の歴史から、今の宇宙がどう作られているのかを知ることとも言えます。
およそ137億年前に、宇宙はビッグバンによって生まれました。その後数億年は水素、ヘリウム、リチウムのたった3種類しか存在しなかったと言われています。
つまり、私たちのかだらを作るのに欠かせない炭素や酸素、文明を支えるために必要な鉄などの金属は、宇宙初期にあったものではないということです。
これらの元素は宇宙誕生の数億年後に生まれた星の中で作られたと考えられています。
太陽のように自ら輝く恒星の中では、水素の核融合がおき、成長していくにつれて鉄まで作られます。そしてその星の中でできた元素が、星の爆発によって宇宙全体に撒き散らされていき、宇宙空間はよりバラエティーに富んだ元素によって満たされていくことになります。
ちなみに、中学校などで教わった元素の周期表は、大まかに宇宙の中で誕生した順番に並んでいます。宇宙の歴史を読み上げているのが、あの「水兵リーベ僕の舟……」だと思うと、いっきに宇宙感を感じられますよね。
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これまでに類を見ない精度の分光観測ができるXRISMは、これらの元素からの特徴的なX線を見て、宇宙の元素がもたらす「味わい」のつくられ方(レシピ)を調べていくと宣言されています。
XRISMに搭載されているこの分光能力を段違いの性能にまで引き上げた装置をマイクロカロリメーターと言います。
これが、これからのX線天文学の歴史を塗り替えていくと期待されているもので、XRISMが打ち上がったのはマイクロカロリメーターの実用へのチャレンジが大きな目的です。
なぜXRISMのマイクロカロリーメーターに期待がかかるのか。
それは、XRISMの前にあった幻のX線観測ミッション「ひとみ」の存在が大きいです。
実はXRISMはひとみの後継プロジェクト。ひとみは2016年2月に打ち上げられた人工衛星で、そこに搭載されたマイクロカロリメーターがもたらすデータに世界中の期待がかかっていました。しかし、初期運用中に不具合が発生し、約1ヶ月でひとみの運用は終了してしまいます。
一方で、そのわずか1ヶ月ほどの間で取得されたマイクロカロリメーターによる観測結果が、世界中に衝撃を与えました。
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観測したのは2.4億光年先にある「ペルセウス座銀河団」という銀河が集まった場所でした。
観測の結果、その銀河のレシピが地球が存在する銀河系と似た環境であることから、私たちが宇宙の中でも比較的「ありきたり」な環境に住んでいるのかもしれないということがわかりました。
他にも、これまで観測しきれなかった鉄の情報を得ることができたりなど、わずか1ヶ月ながら絶大なインパクトを残していたのです。ここで観測の性能が実証されたため、NASAとの共同開発体制を敷き、7年越しにマイクロカロリメーターを搭載し宇宙へと旅立ったのがXRISMなのです。
世界中の期待を背負っているXRISM。運用が本格的に始まった今、答え合わせをするかのようにペルセウス座銀河団の観測がなされ、期待通りの性能を持っていることを世界に知らしめました。
今行われている定常運用によって、これまで考えられてきた常識が覆される事実がどんどん出てくるかもしれません。
世界最高の装置での観測によってインパクトを残していき、日本がX線天文学で世界を引き続き牽引していくことに期待し、そして一緒に打ち上がった月面着陸実証機SLIMの知名度を超える存在になっていくことを願います。
奈良県奈良市にある奈良醸造の「PRISM(プリズム)」。光にかざすと虹色に光を分けるプリズムはまさにXRISMそのもの。名前がマッチしすぎていたのでこちらをセレクトしました。フルーティーな香りが複数重なっており、飲んでいる間に様々な面を見せてくれるので非常に楽しめます。XRISMを感じられるビールでした。
ただ、こちらは残念ながら生産終了しまっているようなので、同じ奈良醸造の定番商品「FUNCTION」もおすすめです。
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次回連載第13回は5月10日(金)公開予定です。
参考資料
【プレスリリース】予想以上の窒素ガスが初期の宇宙に存在―炭素、酸素に対する大幅な超過―/東京大学 宇宙線研究所
X線天文衛星「ひとみ」/JAXA 宇宙科学研究所
宇宙科学最前線「ひとみ」の科学成果/JAXA 宇宙科学研究所 首都大学東京 理学研究科 特任教授 大橋 隆哉
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