2021.1.17
動物には地震予知能力がある!? 阪神淡路大震災を予知して生き延びた専門家が伝えたいこと
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。
前回は、今年の干支でもある、「ウシ」の生態に着目しました。
本日1月17日は、ぶっちーさんも被災した阪神・淡路大震災発生の日。
今回は、動物の地震予知能力について解説します。
※本文中に、震災の体験談や写真が出てきます。あらかじめご留意ください。
地震予知の科学的説明が難しい理由
動物の専門家として仕事をしていると、大人からも子供からも度々聞かれる質問があります。
それは「動物には地震の予知能力があるのか?」ということです。
結論からいうと、わかりません。
「科学的には証明しきれていない」と言った方が、より正確かもしれません。
そもそも私たち人類はまだ「地震の前に何が起きるのか」ということが、正確にはわかっていません。
地震の前兆現象を仮に「X」としましょう。
ここでいう予知能力とは、つまり「X」を感知できる能力ということです。
しかし、動物についても、「X」についても、解明できていないことが多いため、もし動物が地震の前に普段とは何か違う行動をとったとしても、その因果関係やメカニズムを科学的に立証することは難しいのです。
ただ、あくまでも個人的にですが、私は動物には地震予知能力があると考えています。
地震は、大きなエネルギーを伴って地中の広い範囲で地盤がずれるわけですから、大きな揺れが起きる前から徐々に地盤がずれ始める音がしたり、微弱な電気や電磁波などが発生したりして、それを動物が感知する可能性は十分にあるでしょう。
そして、動物の生存本能から危険を避けるための何かしらの能力が備わっていることは、進化の歴史をみてもありえることだと思います。
そして何よりも、実は私自身が、ある種の「予知行動」によって、地震から命を守った経験をしているのです。
動物的な本能で生き延びた!
1995年1月17日。
当時も神戸に住んでいた、中学生の私。中学校は自宅から5分もかからないので、いつも、ギリギリ7時まで熟睡していました。
しかし、その日は、なぜか早朝にパッと目が覚めて「怖い!怖い!」と感じ、頭と足の位置を入れ替えて毛布をかぶったのです。
その直後の5時46分、阪神・淡路大震災発生。
大きな揺れとともに、私の足元に大きなタンスが倒れてきました。頭と足を入れ替えていなければ、間違いなく頭が潰されていたでしょう。
普段は目覚めが悪く、ましてや6時前に起きることなんて絶対なかった私。「これが動物的な本能なのかな?」と感じた経験でした。
そして、時は2011年3月11日。
今度は東日本大震災に見舞われました。このとき私は上野動物園職員でしたが、その日は非番で、自宅でくつろいでいたため、園の動物の様子は見ていません。
しかし、地震発生時、自宅で飼っていたフクロモモンガがケージ中を信じられないスピードで縦横無尽に大暴れしました。
こんな姿はこの時まで見たことがありませんでした。地震発生とほぼ同時か直前に暴れ出したので、大きな揺れの前に、揺れだけではない何かを察知したのかもしれません。