2020.12.6
ザリガニが飼育禁止に!? 人も在来種も、外来種さえも不幸にする「外来生物問題」を考える
ほぼ全ての外国原産ザリガニが規制対象に
では、何が特定外来生物に指定されたのか?
簡単に言うと、アメリカザリガニをのぞく外国を原産とするザリガニ類が、ぜーんぶ特定外来生物に指定されたということです(厳密には、ザリガニ科、アメリカザリガニ科、アジアザリガニ科、ミナミザリガニ科からアメリカザリガニとニホンザリガニをのぞいた全種)。
「え? アメリカザリガニとウチダザリガニ以外は定着していないのでしょ?」
と思われた方もいるかと思います。その通りです。
しかし、まだ定着はしていなくても、ペットや産業活動目的で輸入され、飼育されているものもいます。
それらに関しても、規制がかかるということです。
規制前から飼育をしている場合は申請が必要となります。
特に、重要視されているのは、規制前にすでに相当数輸入・飼育されている「ミステリークレイフィッシュ(マーブルクレイフィッシュ)」と呼ばれているザリガニです。
こちらは、単為生殖といってメスだけで繁殖することができます。
1匹いれば殖えていけるわけですから、そのリスクは想像に難くないでしょう。
アメリカザリガニが規制対象外となった理由とは?
さて、ここで一旦、アメリカザリガニについて話を戻します。
今回特定外来生物入りは見送られたものの、緊急対策外来種であるアメリカザリガニは、1927年日本に侵入しました。
この侵入した理由がまたすごい。
1918年に食用として持ち込まれたウシガエルの、養殖に使うエサとして移入されたのです。
しかし、ウシガエルはアメリカザリガニを専門に食べることはなく、国内のあらゆる小動物を捕食して、現在は特定外来生物指定されています……。
そうして侵入したアメリカザリガニは、日本各地で繁殖し、今や国内でもっとも見かけるザリガニ類となっています。
みなさんが近所の川原などで捕まえたことのあるザリガニは、ほぼ間違いなくアメリカザリガニだと言ってよいでしょう。
ニホンザリガニは北日本(現在は北海道、青森、岩手、秋田のみ)の山間部の冷涼な水域にしかいないからです。
つまり、日本の原風景、子どもの原体験と一般に思われている“ザリガニ釣り”は、実は外来種、それもわりと近年のものなのですよ……。
このようにアメリカザリガニは、すでに日本中で広く飼育されており、指定することで、川や池に大量に捨てられるなどかえって混乱を招くおそれがあるため、今回は規制対象にはなりませんでした。
しかし、植物含む水生生物に対する捕食や競合、さらにはザリガニカビ病(ザリガニペストとも呼ばれるザリガニ類特有の感染症、ニホンザリガニへのリスク大)媒介など、環境への影響は大きいと考えられています。