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恐竜と鳥はワニの子孫? 「ワニの鳴き声」が教えてくれること

仲間で協力して必殺・デスロール!

鳴き声だけでなく、捕食の様子からも、ワニ類の社会性の高さがうかがえます。

実はワニ類の歯は太く、突き刺すタイプのものであって、肉をかみ切ることには向いていません
そのため、大きな獲物を食べるときには、かみついて自分の体を回転させることで肉をちぎりとります。
これは「デスロール」と呼ばれていますが、当然複数のワニで仕掛けた方が効率的です。
実際に仲間が集まってきて、同時にデスロールを仕掛けるのですが、そのときにワニ同士の獲物の取り合いは確認されていません
群れ行動、集団行動においても、社会性が感じられます。

あまり知られていませんが、皮革産業や食肉用に日本を含む世界各地でワニの養殖がおこなわれています。
通常、ワニのような大型肉食動物を大量に限られた空間で飼育することは困難なのですが、ワニの養殖場では同年代のワニたちを高密度で飼育できているのです。
繁殖期にはおとなのオス同士の闘争が見られますが、それを除けばこのように養殖が可能で、それはもともと社会性が高いからだと考えられます。

このようにワニは、見た目は基本的に単独で暮らすトカゲ類に似ていても、その習性は鳥類に近いことを分かっていただけましたでしょうか。

恐竜の暮らしが明らかになる日も近い?

では、見た目はどうしてそんなに異なるのか?

鳥は空を主な生活圏とし飛翔能力を得たために、あのような姿かたちになりました。
一方、ワニは2億年以上も前の三畳紀に現れるのですが、実はそれ以来、つまり2億年もの間、淡水域の大型捕食動物の地位を守り続けています
恐竜類が跋扈ばっこしても、それが滅んで大型哺乳類がたくさん進化してきても、水辺の捕食者、王者はずっとワニなのです。
つまり、あの姿かたちは水辺で狩りをするには最適な姿なのでしょう。

水辺を制したワニ類も、空を制した鳥類も、音声コミュニケーションを使ってそれぞれの社会を築いています。
彼らを調べることで、絶滅してしまった、系統的に彼らの間に存在していた恐竜のこともいろいろ見えてくることは確かです。
恐竜のコミュニケーションや家族像とかも見えてくるかもしれません。

野生でも、動物園水族館でも、ワニや鳥を観察する際は、ぜひそんな目で比較もしてもらえたらと思います。

●主な参考文献
疋田努『爬虫類の進化』東京大学出版会(2002年)
Laurie J. vitt & Janalee P. Caldwell. “Herpetology -An introductory biology of amphibians and reptiles (third edion) .” academic press, 2009.

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新刊紹介

大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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