2020.9.27
恐竜と鳥はワニの子孫? 「ワニの鳴き声」が教えてくれること
動物まみれのめまぐるしくも愉快な日常とは……!?
生き物の知られざる生態についても、自筆のイラストとともに分かりやすく解説します。
動物の専門家によるお仕事&科学エッセイです。
前回は、ジャングルの奥地でスズメバチに刺された際の体験談でした。
今回は、先日イグ・ノーベル賞を受賞したことでも注目を集める「ワニの鳴き声」について解説します。
ワニの鳴き声に関する研究が、イグ・ノーベル賞を受賞!
9月17日、「イグ・ノーベル賞」の受賞者が発表され、ワニにヘリウムガスを吸わせて鳴き声の仕組みを研究した京都大学の研究者が、イグ・ノーベル賞の音響学賞を受賞しました。
かつて上野動物園の両生爬虫類館のスタッフとして働いていた私。同館にも、イリエワニ、ニシアフリカコガタワニ、マレーガビアル(ガビアルモドキ)が飼育展示されており、とても興味深いニュースです。
その研究の概要は様々な媒体で報道されているので、そちらを参考にしていただけたらと思いますが、要は、ワニの発声のしくみの解明についてヘリウムガスを用いるというユニークな研究なのです。
そこで今回は、「ワニって爬虫類の中でもめちゃくちゃコミュニケーション上手なんだぜ!」ということを中心に、私なりにワニのおもしろポイントをお伝えしたいと思います。
ワニから恐竜、そして鳥へ
そもそもワニって鳴くの? と思った方もいるかもしれません。
ワニ類は、今回のヘリウムを使った研究の説明でも出てきていましたが、鳥類に近い動物です。
厳密に言うと、「いまこの地球上に生息している動物の中では」と、但し書きがつきます。系統的に、ワニ類と鳥類の間には恐竜類がいたからです。
進化の説明については長くなるのでまた別の機会に譲りますが、ともかく、「ワニ類は恐竜類を間に挟んで、鳥類にもっとも近縁な現生の動物である」というのは、実は動物学者の間では常識です。
「え!(ワニと鳥って)似てないやん!!」と、思う方もいるでしょう。
確かに見た目は全然違いますが、生態をみていくと実は共通点も多いのです。
まず、鳥もワニも、巣を作ったり子供を保護したり、群れで行動します。その際に音声でコミュニケーションもとります。
鳥が鳴くのはみなさん、よくご存知かと思います。世界各地におよそ1万種もいる鳥類の鳴き声を、生まれてこのかた聴いたことがない! という方はいないでしょう。