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スズメバチに刺された悲劇の夜…秋は攻撃性が増すので要注意!

スズメバチに頭を刺された!

その後、別の日の夕飯時にまた事件が起きました。
疲れていた私は夕飯の支度を休んで(サボって?)、山小屋の自室でこっそり休んでいたのです。

今思えば「働かざるもの食うべからず」という天罰だったのかもしれません。
そろそろ支度ができた頃かと、しれっと仲間のところへ向かい、炊きあがったご飯をよそっているときでした。
頭にザワッと何かが触れたように感じました。
髪に何かついたのかな? 手ではらっても落ちません。
もう一度、はらった次の瞬間、脳天に衝撃が!

正体は窓から侵入していたツマグロスズメバチと思わるハチでした。ネッタイヒメスズメバチなどよく似た種類もいて、識別が難しいため、別種だった可能性もあります。

思わず、「ヤミスズメバチちゃうんかーい!!」とツッコんでしまいました。
なぜなら、夜行性のヤミスズメバチと違い、ツマグロスズメバチやネッタイヒメスズメバチは昼行性で、夜は巣にいるはずだからです。
特徴を少し書いておくと、ツマグロスズメバチもネッタイヒメスズメバチも黒とオレンジのツートンカラーで2~3cmくらい。前述した通り、全身オレンジのヤミスズメバチとは見た目がだいぶ異なります。
ただ、3種ともいくつかの種や亜種が東南アジアに広く分布していて、ツマグロスズメバチについては日本の八重山諸島でも見ることができます。

私を刺したスズメバチの種類については、ツマグロスズメバチかネッタイヒメスズメバチのいずれかだと思われますが、以降は便宜上、ツマグロスズメバチと表記します。

狙われた原因は汗?

さて、なぜ昼行性のツマグロスズメバチが夕飯時に私の頭にとまったのか、疑問が残ります。
実は、この食堂は灯りがついており、本来は虫よけのため閉めておくべき窓がなぜか開いていました。そのため、ツマグロスズメバチは光に誘われて侵入してきたようなのです。
私が刺されたことに焦った現地人が「誰だ! 窓を開けたのは!?」と騒いでいました。実はこの人こそ窓を開けた張本人だったのですが……。

また、同じ部屋に10名くらいいたのに、しかも私は遅れて入室したのにも関わらず、私の頭だけが標的になりました。
その理由は定かではないのですが、もしかしたら汗と関係があったのかもしれないと推察しています。
私はかなりの汗かきです。日本のハチ類の資料に、人間の汗に寄ってくるとあるので、ツマグロスズメバチも私の汗に誘われてしまったのかもしれません。
もっと自室で涼んでから行けばよかった(違う)。

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新刊紹介

大渕希郷

おおぶち・まさと●どうぶつ科学コミュニケーター
1982年神戸市生まれ。京都大学大学院博士課程動物学専攻、単位取得退学。その後、上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館:科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教(日本モンキーセンター・学芸員 兼任)を経て、2018年1月に独立。生物にまつわる社会問題を科学分野と市民をつなげて解決に導く「どうぶつ科学コミュニケーター」として活動中。
夢は、今までにない科学的な動物園を造ること。特技はトカゲ釣り。
著書に『新ポケット版 学研の図鑑絶滅危機動物』『新ポケット版 学研の図鑑 爬虫類・両生類』(いずれも学研教育出版)、『絶滅危惧種 救出裁判ファイル』『動物進化ミステリーファイル』(いずれも実業之日本社)、『どうぶつ恋愛図鑑』『へんななまえのいきもの事典』(いずれも東京書店)など。最近は、「こども環境地球儀ハトホル」(渡辺教材教具)など教材開発にも関わる。愛称はぶっちー。
公式ホームページ: http://m-ohbuchi.com/

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