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鈴木涼美「×××な男~酒と泪とオトコと美学」
○○○な女〜オンナはそれを我慢している」のアンサーソングともいうべき新連載は、気鋭の文筆家・鈴木涼美によるオンナ目線の男性論。とはいえ、ここで取り上げるのは現代を生きる「今」のオトコたちの生態事情。かつてはもてはやされた男性像が、かつては相手にもされなかった男性キャラが、令和の今、どんな進化・退化・変遷を遂げているのか? 冴え渡る涼美節・男性論に乞うご期待!

ポリコレな男~正しいことがあるって信じるポジティブってバカのことなんだよの話

いきなりぶっちぎりで懐かしい話なんですけど、2002年くらいに2ちゃんねるとかでちょっと流行ったフラッシュ動画の「バスト占いのうた」ってわかりますか? 
さっき調べたら宮崎吐夢という音楽家が作ったと思われるんだが、要はワン・リトル・インディアン(ワンリトル、ツーリトル、スリーリトルインディアン♪ってやつね)のメロディにのせて、教会の結婚式コントの「チカイマスカー?」に似たような、わざとらしい発音の外国人が、◯カップ好きの男はどんな奴か、ということをHカップからAカップまで延々と歌う、という動画。
わからない人はさっきYouTubeに転がってたので見ておいてください。

それで、Fカップ好きは自分に素直とか、Aカップ好きは卑屈だとか色々言うのだけど、Bカップ好きのところが秀逸で、「好みとしては中途半端、なくてもいいけどちょっとはあった方が……そんなの微妙すぎ」というコメントは、その発音も含めて非常に耳に残る。
というかこの動画はどうやら巨乳好きな人が作っているようで、全体的にはあんまり大きいサイズを答えるのは夢みがちで、あんまり小さいサイズを答えるのは卑屈、という法則性があるのだが、その考えの是非はさておき、私はここのBカップのコメントを最近よく勝手に口ずさんでいる。
ふと気づくと、正月ホリデーで来ているパリの散歩中、口をついて出るのはどぶろっくの「大きなイチモツをください」か、このBカップのところってな感じで。

バスト占いでBカップと答える男の微妙なメンタリティ

たしかに何カップがいいかと聞かれて、Bと答えるメンタリティはちょっと微妙だ。
モデル体型でスラッとした貧乳が好きならAでいいじゃん。実際に自分の彼女がBカップだとしても、わかりやすい表象としてのAでいい。
小ぶりで綺麗なバストが好きなら古今東西Cカップって相場が決まっているし、大きいのが好きな人はFとか言う。

ではなぜBなのか。

想像すると、このBと答える人はどちらかといえばオッパイのサイズは小さい方が好みなんである。
だけど、Aと答えると、もうデカ乳女は取りつく島がないというか、言語道断、俺は細くてスラッとしたファッションモデルみたいなペッタンコカンカンな女しか受け付けません、と言われているようで、たぶん彼に対して悪しからず想っていたとしても、私には無理だろうな、と諦める。
私だって目の前に座った男がAカップ好きだと告白してきたら、喧嘩売ってんのか、と思うか、私の価値がわからないならその席をどけ、と思う。
Fとか答えられた時の貧乳ズの気持ちもそんな感じだろう。

全員が不正解のバスト占いは男の試金石
全員が不正解のバスト占いは男の試金石

さてそこでBカップときたら、いろんな意味で各方面に気を使っている、ということにはなる。
真ん中あたりって感じがするCとかDより少し小さめよりにしておくことで、言語の上ではディスられやすい貧乳女子による評価は勝手にあがるだろうし、Aとならないことで乳に対する毛嫌いのようなものは感じない。やや弱者よりの味方、でも強者を恨んでいるわけでもない、というところが、なんともバランスがいい。そしてなんともいけ好かない

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

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