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鈴木涼美「×××な男~酒と泪とオトコと美学」
○○○な女〜オンナはそれを我慢している」のアンサーソングともいうべき新連載は、気鋭の文筆家・鈴木涼美によるオンナ目線の男性論。とはいえ、ここで取り上げるのは現代を生きる「今」のオトコたちの生態事情。かつてはもてはやされた男性像が、かつては相手にもされなかった男性キャラが、令和の今、どんな進化・退化・変遷を遂げているのか? 冴え渡る涼美節・男性論に乞うご期待!

思春期積み残し男~今更覚えたてのタバコをふかされてもな話

キャバクラに勤めていた頃、1週間周期で出くわす客のジャンルというのが数種類あって、1週間ちゃんと出勤してその典型ジャンル数種類を全て発見すると、今週もクリアした!という気分になっていた。

長く勤めれば勤めるほど客のジャンルというのは色濃く分類できるようになるから、最後の方は、ああ今週も、純愛系・自己陶酔系・知識ひけらかし系・謎に別れ話してくる系・お前のこと分かってる系で痛客のロイヤルストレートフラッシュ達成だわとか思ってグダグダ働いていたのだけど、それとは別に新人の頃は新人の頃で、新人だからこそ出くわしがちなパセティックゲスツ集というのも存在する。

例えば新米キャバ嬢と常連客のこんなウィンウィンな状況

新人には当然馴染み客はまだいないので、フリーの客をまわるか先輩キャストのヘルプにつくかなのだけど、店側は気難しい客に新人をつけてキレられたくもないし、太そうな新規客には太鼓判の売れっ子をつけるか、最近頑張ってる子をご褒美としてつけたい。
新人なんて若いとかウブだとか業界に染まっていないとか汚れてないとかいう魅力しかないので大した客は回ってこない……。
なーんてわけは当然なくて、この世の中には若くてウブで業界に染まっていなくて汚れてないということが何より優先されるべき魅力だと思っているおじさんがわんさかいるので、待機で暇を持て余すことなく、結構色んなところをぐるぐる回される。

それは当然、女の子の方を向いた思考でもある。
キャバクラは客をいい気分にさせてお金を使わせるのも仕事だが、女の子をいい気分にさせて飛ばずに働かせるのも仕事だし、店も、女の子は自分の需要と価値が感じられない場所には居つかない、ということを重々承知しているので、女の子がいい気になれるよう、「新人が好かれそうな場所」へのいざないを怠らない。
優しくしてあげてくださいね的な感じでツルピカ一年生の女をそういう女が好きそうな常連にあてがって、「俺は大事にされてる上に信用されてる客だな」と思わせつつ、結構な上客につけられてるってことは店は私をいい商品だと認識してるってことだし、その客が自分をあてがわれて喜んでるってことは私には価値がある!と女の子に思わせられるのだから、まさにウィンウィンである。

新米は文字通りコシヒカリの中でも一番高級
新米は文字通りコシヒカリの中でも一番高級

さて新人の時によくついた客にもいくつかのジャンルがいて、一番多いのはそういう店側の理想系である、「結構お金をつかう常連で、新人のスレてない女の子をヘルプにつけると指名嬢をつけるより喜ぶ」紳士たちである。

彼らにキャッチフレーズをつけるなら、それは当然「おじさんが教えてアゲル♡」。

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鈴木涼美

すずき・すずみ●1983年東京都生まれ。作家、社会学者。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、東京大学大学院学際情報学府の修士課程修了。大学在学中からキャバクラ嬢として働きだし、20歳でAVデビュー、出演作は80本以上に及ぶ。2009年から日本経済新聞社に勤め、記者となるが、2014年に自主退職。女性、恋愛、セックスに関するエッセイやコラムを多数執筆。
公式Twitter → https://twitter.com/suzumixxx

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