2019.12.4
姉は漫画家。妹は編集者。 出版界の有名姉妹がヒットを生み続ける理由
お相手は、紀子さんの実姉で漫画家の松田奈緒子さん。代表作の『重版出来!』はドラマ化され、現在もファンを増やし続けています。『悩んでも10秒』カバー装画では紀子さんを描いてくれました。同じ出版業界で活躍するヒットメーカー姉妹の原点とは? 好きなことを仕事にして、長〜く続ける極意は? ここでしか読めない、ぶっちゃけトークの始まりです。
松田紀子さん『悩んでも10秒 考えすぎず、まず動く! 突破型編集者の仕事術』刊行記念
カバーに絵ば描いてくれんね?
――ヒットを飛ばす編集者として活躍してきた松田紀子さんが、初めてご自身の著作となる本を出版されました。
紀子 いやぁ、ずっと作家さんの伴走役だった私が、まさか本を出せるなんて。自分が一番驚いています。
奈緒子 しかも、紀子が子どもの頃から入りたがっていた集英社からじゃないの。
紀子 そうそう、映画雑誌『ロードショー』を愛読していて、ジャッキー・チェンに憧れたのが、私が「編集者になりたい!」と夢を描いた原点だったからね。姉もデビューは集英社からでしたし、姉妹そろってご縁を感じます。
――本書ではカバーイラストを奈緒子さんが描いてくださって、“姉妹コラボ”も実現しました。
奈緒子 はい。LINEで妹から「カバーに絵ば描いてくれんね(長崎弁)」と連絡が来ました。
紀子 ラフを見せてもらった時、思わず笑っちゃいました。ビールジョッキと骨付き肉を手に、上機嫌な私(笑)。姉ちゃんの私のイメージは、いつまで経ってもこれなんだよね。
奈緒子 もう10年以上前だけど、紀子から「ちょっと相談がある」と連絡が来て、下北沢の居酒屋で飲んだ時があって。なんの相談だったかは忘れちゃったけど、紀子が最初のオーダーで揚げ物ばっかり頼んでて。テーブルが茶色一色。普通、サラダとか枝豆も頼むでしょ?
紀子 アハハ、近頃はビールは控えめにしてレモンハイ程度に落ちつきました。
奈緒子 似たようなもんじゃないの。茶色一色になったテーブルを見ながら、「まったくバランスを考えない妹だ」と呆れつつ、面白かった印象が強烈にあるんだよね。
紀子 そっかぁ。でも、はからずも『悩んでも10秒』というタイトルに妙にハマる絵になっているし(笑)。というか、ビジネス書の棚に並べてもらいたい本なのに、タイトルも絵も斬新すぎじゃない? ところで、中身のほうは読んでくれました?
奈緒子 読んだよ。まずね、すごく読みやすかった。
紀子 よかった!
奈緒子 次に思ったのが「うちの妹が、ごめんなさい」。これまで紀子がお世話になった会社関係の方々、仕事相手の方々に、「申し訳ありません、申し訳ありません…」と心の中で謝りながら読み進んでいったんだけど。
紀子 アハハ、姉目線で…(小さくなる)。
奈緒子 でもね、「編集部のメンバーが働きやすくなるように、経理専門の派遣社員さんを雇った」というエピソードがあったでしょ。あれはすごくいいと思って、「紀子も少しは役に立ったのかな。もう許してあげてもいいかもしれない」という気持ちになれました。
紀子 (ホッ)ま、理解ある上司や会社に恵まれたというのもありますが。
奈緒子 あと、この本は頑張りたい女性たちだけでなく、女性の部下をどう扱っていいか分からないおじさんたちにも参考になるんじゃないかと思いました。女性が何に気を遣って仕事をしているのかとか、どういう気持ちで働き続けたいと思っているのかとか、表面的な会話では掌握しにくい部分まで書かれているので。女をおだてればいいってもんじゃないのよ、と伝えられる本だと思いました。
紀子 お、意外にちゃんとビジネス書になってるのかな? よかった、よかった。
奈緒子 昔ながらの古い価値観や制度でがんじがらめになって苦しんでいる女性たちにとっても、紀子の経験談は「こんなふうに自分を解放できたら、もっと活躍できるかも」と元気づけるメッセージにもなるんじゃないかな。
紀子 そうなっていると嬉しいです。