2021.8.6
「手すり滑り」はいつ誰が始めた? スケートボードの歴史からスケーターファッション&カルチャーを完全解説
スケボー界のパイオニア「Z-BOYS」
やがてスケートボードは、大人から危険でうるさい乗り物として認識され、公の場での使用が禁止されるようになっていく。しかし、こうした良識的な社会からの排除こそが、ストリートスタイルの誕生を後押しするものである。1970年代半ばになると、西海岸でストリートから沸き起こるように、スケートボードブームがはじまった。
先導者は1975年のカリフォルニア・ヴェニスビーチで、ゼファーというサーフチームから分離して結成されたスケートボードチーム、Z-BOYSである。ヴェニスは当時、ギャングや麻薬の売人が跋扈する危険な街で、警官がひっきりなしにパトロールしていたために、ドッグタウンという通称で知られていた。
Z-BOYSのメンバーは、1960年代から進歩がなかった平地での逆立ちやウィリーなどの技に飽き足らず、サーフィンの技を取り入れ、左右交互に重心移動を繰り返すことによってウィール(車輪)を加速させるポンピングや、地面に手をついて体を支え、ウィールをスリップさせて180度転回するスライドターンなど、型破りなスケーティングテクニックを開発し披露した。
坂道が続く大きな駐車場や、水を抜いたすり鉢状のプールも、彼らにとってはかっこうのスケートスポットとなった。公の場から締め出されつつあった遊びとしてのスケートボードを、社会への反逆カルチャーとしてストリートに引き戻したのが彼らだったのだ。
Z-BOYSをより深く知るためには、2005年に制作されたアメリカ映画『ロード・オブ・ドッグタウン』が必見である。
スケータースタイルの誕生
Z-BOYSのスケートテクニックとライフスタイル、そしてファッションは若者たちの憧れの的となり、後のスケーターのひな型となっていく。
サーファーを中心にして結成されたZ-BOYSのファッションは、1970年代西海岸のサーフスタイルを踏襲するスポーティなものだった。アクションがとりやすいようにややオーバーサイズ気味で派手な柄のTシャツやネルシャツ、ボトムスはバギーパンツあるいはリーバイスのデニム。足元はヴァンズのオーセンティックというのが基本スタイルだ。スケートの大会で彼らは、ヘヴィメタルバンドのブラック・サバスなどによるハードな楽曲をBGMに、長髪をなびかせて超絶的な技を披露した。
この頃のスケーターは、サーファー御用達だったOP(オーシャンパシフィック)、オフショア、クイックシルバー、ガッチャ、ビラボンなどのショップでアイテムを買い揃えていた。