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家飲みでお酒の量、増えていませんか? 身近に潜む「アルコール依存症」のリスク、6つのケース

ケース5:妻に先立たれ、酒宅配の常連客となった60代男性

60代の男性Cさんは、定年まで勤めた会社を退職、子どもはすでに独立しており、妻と二人きりの生活になりました。

これから第二の人生を妻と楽しくと思っていた矢先、その妻が心筋梗塞で急逝。大きな喪失感に加え、家の勝手がさっぱりわからず、生活もままならないので、孤独感とストレスから自然と慣れ親しんできたお酒に手が伸びました。

酒はスマホを使って自宅まで配達してくれる酒販店に注文。ビール1本から、つまみまですぐに注文できる気軽さが手伝って、飲酒量とアルコール度数は増える一方に。
気を失うまで飲み、気がつくと、リビングの床に失禁して横たわっているような日が続くようになりました。

久しぶりに実家を訪ねた娘が異臭のするゴミ屋敷で空き缶に埋もれる父を発見。その頃には幻覚や幻聴のような精神症状も現れるようになっていたCさんは、アルコール依存症と診断されました。

斉藤さんは、お酒の価格が安いことや、酒販店の充実した配達サービスなど、日本には「アルコール依存症者の飲酒が促進されやすい外的要因」があると指摘します。
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ケース6:認知症の母の介護の合間に缶チューハイを飲み続けた50代女性

離婚後、看護師として働きながら女手一つで二人の息子を育て上げたFさん。
ようやく息子たちが巣立った後、待ち受けていたのは、母の認知症でした。

仕事を辞めて介護に勤しむFさんでしたが、認知症になった母は、日に日に言うことが他罰的になり、Fさんにも一日中文句をぶつけてきます。
ある日耐えかねたFさんは、とうとう母親に手を上げてしまいました。

そんな自分にショックを受け、ストレス解消にと手を伸ばしたのがお酒でした。

長い間飲酒の習慣がなかったFさんですが、スーパーに行けば、色とりどりの飲みやすそうな缶チューハイが売られています。酔った状態だと、介護のイライラも和らぎました。

母親が亡くなった後、飲酒量が減るどころか、加速度的に増えていったFさん。
帰省した長男が異変に気付き、専門病院に連れて行きました。
その頃のFさんは、ストロング缶500㎖を1日8~10本も飲む生活になっており、固形物を食べられなくなっていたため、ふくよかだった体形はガリガリになっていました。

斉藤さんは、「老々介護や8050問題を抱える家族も、ここにさらにアルコールが絡んでくるとより問題が複雑化します。今後の高齢者のアルコール問題における課題と言える」と指摘します。
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以上、様々な背景からアルコールの問題を抱えるようになった6人のケース紹介でした。

かつてアルコール依存症の診断を受け、現在断酒歴10年の回復者のインタビュー記事(前編後編)も公開中です。

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