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祝!続々重版!!【村井理子ロングインタビュー前編】「赤川次郎を知り、椎名誠に恋をし、ブッシュを追った」、その半生とカルチャーを振り返る

ブッシュへの執着が初の翻訳本へ

――そこからどうやって翻訳という道に行かれるんでしょうか。

さっき話したヨウコちゃんとか、友人のおかげです。彼女は本当にニューヨークに移住して、よく長距離電話してて。あるとき「ブッシュの息子が次の大統領になったら、私アメリカ出るかも」と言い出したんですよ。それで私もいろいろ調べてみて、たしかにこんな人がアメリカの大統領になったらヤバいって気づいた頃には、本当に大統領になってしまった。

――村井さんの最初の翻訳書『ブッシュ妄言録』は、そこから生まれたんですね。

そうなんですよ。最初はただ調べるだけでしたけどね。書き始めたのも友人のおかげなんです。当時同僚だったみっちゃんが、急に「私、これからはインターネットやと思う」って言い出して、デジタルハリウッドっていう専門学校に通い始めて。それで卒業制作でウェブサイト作るってことで、なにか一緒にやろうよって誘われて、「ブッシズム」を書き始めたんです。

――そのサイトがフガフガ・ラボですか。

そうそう。みっちゃんが「私、猫好きだから猫のことやる」ってペットサイト「フガフガ・ラボ」を作ったんです。そこでなぜか私はブッシュのことを書く(笑)。サイトが完成して少し経った頃、今はなき雑誌『ダカーポ』の編集者からメールが来て、「ブッシズムをダカーポに載せたいです」って言うんで載せてもらって。その翌週にはこれまた今はなき「ぺんぎん書房」の編集者が「本にしましょう!」と言ってくれたんです。

――すごいトントン拍子だったんですね。

そうなんですよ。自分ではまさか本になるなんて思いもしませんでした。出版が2003年ですが、それからしばらくして、『マイケル・ムーアの恐るべき真実 アホでマヌケなアメリカ白人』が話題になって、コバンザメ商法でめちゃんこ売れました。6万部ぐらいかな。

左より『ブッシュ妄言録』(ぺんぎん書房/2003年1月)『ブッシュ妄言録2』(ぺんぎん書房/2003年5月)『ブッシュ妄言録 ブッシュとおかしな仲間たち』(二見文庫/2006年)
左より『ブッシュ妄言録』(ぺんぎん書房/2003年1月)『ブッシュ妄言録2』(ぺんぎん書房/2003年5月)『ブッシュ妄言録 ブッシュとおかしな仲間たち』(二見文庫/2006年)

――『ブッシュ妄言録』は続編も出てますね。

そうですね。その後もブッシズムは、フガフガ・ラボからページを独立させて更新し続けたんです。結局、ブッシュの2期目が終わってホワイトハウスを離れる様子を書いて、更新を終わらせて、翌日にはサイトごと削除しました。

――8年以上もブッシュについて書き続けたんですね。

もともとアメリカの大統領って気になる存在だったんですよ。それでブッシュの強烈なキャラクターが気になってしまった。私、みんなに嫌われてる人ってなんか気になっちゃうんですよね。どうしてそんなに嫌われるんだろうと。

――オバマの名言は日本でもかなり注目されましたが、そっちはあまり興味なかったですか?

うん、おもしろくなかったです(笑)。かといって、トランプの4年まで行くと、イヤすぎて見てられなかった。ただ、メラニアは気になりましたね。なんであんなにリベラルの人たちから嫌われるんだろうって。調べてもほとんど情報が出てこないのも不思議でした。私、みんなに嫌われる人は、自動的に好きになってしまうところがあるんですよ。人間って一筋縄ではいかないから、簡単に好きとか嫌いとか、善悪で片付けてしまったら、おもしろくないですよ。

後編に続きます>

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実兄の突然死をめぐる『兄の終い』、認知症の義母を描く『全員悪人』、壊れてしまった実家の家族について触れた『家族』。大反響のエッセイを連発する、人気翻訳家の村井理子さん。認知症が進行する義母の介護、双子の息子たちの高校受験、積み重なりゆく仕事、長引くコロナ禍……ハプニング続きの日々のなかで、愛犬のラブラドール、ハリーを横に開くのは。読書家としても知られる著者の読書案内を兼ねた濃厚エピソード満載のエッセイ集。

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村井理子

1970年、静岡県生まれ。翻訳家、エッセイスト。主な著書に『兄の終い』『全員悪人』『いらねえけどありがとう いつも何かに追われ、誰かのためにへとへとの私たちが救われる技術』『ハリー、大きな幸せ』『家族』『はやく一人になりたい!』『村井さんちの生活』 『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』『ブッシュ妄言録』『更年期障害だと思ってたら重病だった話』『本を読んだら散歩に行こう』『ふたご母戦記』『ある翻訳家の取り憑かれた日常』『義父母の介護』など。主な訳書に『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』『黄金州の殺人鬼』『メイドの手帖』『エデュケーション』『捕食者 全米を震撼させた、待ち伏せする連続殺人鬼』『消えた冒険家』『ラストコールの殺人鬼』『射精責任』など。

무라이 리코
1970년, 시즈오카현 출생. 번역가, 에세이스트. 주요 저서로 『오빠가 죽었다』 『낯선 여자가 매일 집에 온다』 『필요 없지만 고마워: 항상 무언가에 쫓기고, 누군가를 위해 지쳐있는 우리를 구원하는 기술』 『하리, 커다란 행복』 『가족』 『빨리 혼자가 되고 싶어!』 『무라이 씨 집의 생활』 『무라이 씨 집의 꽉꽉 채운 오븐구이』 『부시 망언록』 『갱년기 장애인 줄 알았는데 중병이었던 이야기』 『책 읽고 나서 산책 가자』 『쌍둥이 엄마 분투기』 『어느 번역가의 홀린 듯한 일상』 『시부모 간병』 등이 있다. 주요 번역서로는 『요리가 자연스러워지는 쿠킹 클래스』 『어둠 속으로 사라진 골든 스테이트 킬러』 『메이드의 수첩』 『배움의 발견』 『포식자: 전 미국을 경악하게 한, 잠복하는 연쇄 살인마』 『사라진 모험가』 『라스트 콜의 살인마』 『사정 책임』 등이 있다.

X:@Riko_Murai
ブログ:https://rikomurai.com/

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