よみタイ

『高IQ者が考えた 解くだけで頭がよくなるパズル』著者インタビュー  いいことばかりじゃない!? 高IQ者の日常 ~学生時代編~

好評発売中の『高IQ者が考えた 解くだけで頭がよくなるパズル』。
著者の関口智弘さんは、たとえIQが高くても、その使い方次第では却って苦労したり失敗してしまうことがある、という実体験から、本書の執筆を思いついたと言います。
幼少期から、勉強で苦労したことはついぞなかった、という関口さん。さぞ快適な学生生活を送れたのではと思いきや――そこには高IQ者ならではの意外な「生きづらさ」があったのです。

「意地の悪い子」と言われた幼少期

――ご自分のIQが、人より高いのかもしれない、と思ったのは何歳ぐらいの時ですか?
 一番古い思い出だと、保育園のときですね。同級生が25人くらいいたんですが、その子たち全員の誕生日を、一日で覚えられたんです。そのときは、みんなそういうものだと思っていたから、他の子が自分の誕生日を覚えていなかったりすると、ちょっと悲しくなったりして……。でも、どうやら全部覚えられる方が珍しいんだ、ということにだんだん気づいていきました。
 小学校に入ってからは、テストがありますよね。何もしなくても、常に100点でした。それが当たり前だったので、いわゆる自分がのび太くんみたいな、勉強ができない子ではないんだろうな、とは思っていました。

――先生やご両親には、すごく褒められていたんじゃないですか?
 それが、そうでもなくて。なまじ頭の回転だけは速いので、よくしゃべるんですよね。そうすると、口は禍の元じゃないですけど、しゃべりすぎるがゆえのトラブルが色々出てくるわけです。先生や親に口ごたえをするとか、同級生とケンカになったときは、相手の10倍は言い返して泣かせてしまうとか。自分としては、ただこちらの言い分を話しているだけなのに、ものすごい速さでバーッとしゃべるから、相手は不愉快になるわけです。
 それで、「あいつは性格が悪い」「意地の悪い子」と、しょっちゅう言われていました。先生も親も、僕の頭の回転の速さについては、あまりポジティブに評価はしていなかったですね。
 あと、よく小学校で行われる「話し合い」。あれがすごく苦手でした。学級会とかで、意見を出し合って何かを決めるというプロセスが、本当に苦痛だった。クラスメイトの言っていることがめちゃくちゃだったり、論旨がずれていたりすると、僕は「なんで!?」って思ってしまうけど、みんなが納得できればそれで終わり、というのが多くて。それなら、と思ってみんなを説得しようと議論を持ちかけても、誰もわかってくれなかったりとか。
 これは本の中でも書いたんですが、高IQの人間って、行間を省略するクセがあるんですよね。A=B、B=C、つまりA=Cですよね、と説明しなければいけないところを、いきなりA=Cを前提として話し始めてしまったりする。聞いている方は、置いてけぼりを食ったまま、「この人何を言っているんだろう」と呆れたり、「極論だ!」と怒り出す人もいます。このクセに自分で気づくまでは、とにかく、「相手に自分の考えをわかってもらえない」。この一言に尽きましたね。
 だから、子どもの頃は、自分は他の人より優れているんだ、というような認識ではなくて、人と合わないんじゃないか、うまくやっていけない人間なんじゃないか、という漠然とした不安が常にありました。

ギャグがすべる! 中高生時代

――気の合う友達なんかは、いなかったんですか?
 学生の頃って、ゲームとかテレビとか、その時その時の共通言語があるので、会話を合わせることはできるんですよ。だから、クラスに普通に5,6人くらいは、話をできる人はいましたね。ただ、そういう共通言語なしで会話できる友達となると、クラスに1人もいなかったです。学年に何人かいればいい方で、隣のクラスまで話しに行ったりとか。
 僕が話していてラクなのは、会話のテンポが合う人なんです。よく会話をキャッチボールにたとえたりしますけど、僕にとってはキャッチボールの速度では遅すぎる。野球よりもテニス、テニスより卓球、くらいの方が心地よく感じます。卓球のラリーくらいの速さで会話できると楽しい。だから僕の友達は、みんな会話の打ち返しがすごく速いですね。あと、返しがうまい。僕が省略している行間を、ちゃんとわかった上で返してくれるんで、一緒にいてストレスがないんです。

――そういう数少ない友達とは、何をして過ごしていたんですか?
 僕はお笑いが好きで、よくお笑いの話をしていました。クラスメイトからは、関口のギャグはわかりにくい、って言われて、結構凹んだりしていたんですけど……本当の友達の中だと、ちゃんと僕のギャグを理解して、ツッコんでもらえるんで、嬉しかったですね。
 ボケって、ツッコミがいないと成立しないじゃないですか。僕のボケは行間を省略しすぎているのか、あまりわかってもらえないことが多くて。だから、的確にツッコんでくれる人がいないと、僕がギャグを言っていることすら、誰も気づいてくれない(笑)。
 たとえば、ボケのつもりで「いらっしゃいませ、こんにちは。いらっしゃいませ、こんにちは。いらっしゃいませ、こんにちは。」って3回言ったとしても、「ブックオフかよ!」っていうツッコミを入れてもらえなければ、「ただの3回言っただけの奴」になってしまいますよね。あと、「なんで3回言ってるんだよ!」とかいう、雑なツッコミも、ボケを殺してしまいます。サンドウィッチマンさんのあのネタは、富澤さんが省略した行間を、伊達さんが的確に拾って、なおかつ高速で打ち返しているからこそ、成立する面白さだと思うんです。
 これは高IQの人みなさんに言えることだと思うんですが、ツッコミ不在の高IQ者は、能力を活かせないんですよ。だから、自分が省略している部分や、すっ飛ばしちゃってる部分を的確に理解した上で、補足してくれるような存在を見つけられるかどうか。これが高IQ者の運命の分かれ道かもしれません。学生時代というのはコミュニケーションで評価される時期ですから、尚更ですよね。

1 2

[1日5分で、明日は変わる]よみタイ公式アカウント

  • よみタイ公式Facebookアカウント
  • よみタイX公式アカウント

新刊紹介

関口智弘

せきぐち・ともひろ●1979年埼玉県生まれ。成蹊大学卒業後、3年間で5社での勤務を経験。広告会社、IT企業を経て独立。マーケティングシステムリース、ウェブサイトアクセスアップツール開発を本業とし、海外で馬主業にも参入。人口上位2%(IQ148以上)の知能を持つ人々の交流団体「JAPAN MENSA」会員。著書に『これからの「稼ぎ」の仕組みをつくろう』『群れない力』がある。

週間ランキング 今読まれているホットな記事

  1. タワマン住みエリート会社員が少年時代にポケモンで遊べなかったことを後悔する理由とは?【5分後に、虚しい人生。試し読み】

  2. 稲田俊輔「西の味、東の味。」

    イナダシュンスケが〝世界一好き〟なラーメン店は鹿児島にあった

  3. 「わかり合えなさ」を社会言語学で解きほぐす

    第3回 友人からのマウント。挑発に乗らず、どう切り抜ける?

  4. 群ようこ「ちゃぶ台ぐるぐる」

    母の無水鍋

  5. 藤井セイラ「モラハラ・DVから 逃げる技術! 「この結婚失敗かも……?」と思ったら知っておきたいTips50」

    夫から逃げて、幸せです。【逃げる技術!第1回】モラハラ離婚の「ダンドリガイド」つくります!

  6. 中村憲剛対談「思考のパス交換」

    【中村憲剛×尾形貴弘対談 前編】最低の先輩だったパンサー尾形が「頑張ることこそカッコいい」と思えるようになった理由

  7. 藤井セイラ「モラハラ・DVから 逃げる技術! 「この結婚失敗かも……?」と思ったら知っておきたいTips50」

    殴る蹴るだけがDVじゃない【逃げる技術!第2回】あなたの周りにも隠れ被害者はいませんか?

  8. 伊藤弘了「感想迷子のための映画入門」

    岩井俊二『Love Letter』のヒロインが一人二役である理由 ――あるいは「そっくり」であることの甘美な残酷さ

  9. 齋藤美衣「台所で詠う」

    知り合って27年の夫のことを何も知らない【第6回 】夫婦の出会い直し

  10. 藤井セイラ「モラハラ・DVから 逃げる技術! 「この結婚失敗かも……?」と思ったら知っておきたいTips50」

    相談するって難しい【逃げる技術!第3回】合わなかったら「チェンジ!」も大事

  1. 進藤やす子「イラストレーター、准教授になる」

    愛犬が虹の橋を渡る…離れて暮らすデュアルライフだから考える家族との距離 【イラストレーター、准教授になる 第22回】

  2. 野原広子「もう一度、君の声が聞けたなら」

    なんてことないことがドラマのようで 第6話 タマ子の幸せ、守の夢

  3. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    誰にも言えなかった性的願望…それを解放できるのが「女風」だった【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第7話前編】

  4. 野原広子「もう一度、君の声が聞けたなら」

    「残念」とかいうな 「元気」なんか出るか 第5話 オレは怒っている

  5. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    女性用風俗に通う女性たちの心のうちを描くコミック新連載【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第1話前編】

  6. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    依存しては捨てられ……男に絶望した私がレズ風俗で見つけた「生きる理由」【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第5話】

  7. 進藤やす子「イラストレーター、准教授になる」

    愛犬「ふうちゃん」と過ごす週末で心身が安定!最新は3拠点生活しています【イラストレーター、准教授になる 第21回】

  8. 野原広子「もう一度、君の声が聞けたなら」

    妻が逝った。オレ、もう笑えないかもしれない 第1話 さよなら、タマちゃん

  9. なかはら・ももた/菅野久美子「私たちは癒されたい 女風に行ってもいいですか?」

    私も誰かを癒すことができる…?39歳人妻が女性用風俗から得た「気づき」【漫画:なかはら・ももた/原作:菅野久美子「私たちは癒されたい」第6話後編】

  10. 野原広子「もう一度、君の声が聞けたなら」

    妻がそばにいることが、あたりまえだと思ってた 第2話 涙が出ない