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看護師、WEBデザイナー、名門音大卒のチアリーダー……「わたしがレースクイーンになったワケ」

看護師、WEBデザイナー、名門音大卒のチアリーダー……「わたしがレースクイーンになったワケ」

SUPER GT2019「2019 KOBELCO GIRLS/2019 SARDイメージガール」の中村比菜さん。先月の日本レースクイーン大賞2019にて、大賞およびテレビ東京賞を獲得。天真爛漫なキャラで安定した人気。(写真提供/GALSPARADISE)
SUPER GT2019「2019 KOBELCO GIRLS/2019 SARDイメージガール」の中村比菜さん。先月の日本レースクイーン大賞2019にて、大賞およびテレビ東京賞を獲得。天真爛漫なキャラで安定した人気。(写真提供/GALSPARADISE)

音大卒業後、ミュージカルの世界に進むつもりが、まさかの展開に!!

去る1月、壮絶な投票バトルの末、「2019 日本レースクイーン大賞」を受賞したのが、中村比菜さん。レースクイーンになるまでの、彼女がたどった経歴もまた独特だ。

「音楽大学で、声楽そしてオペラを専攻していたんです。卒業したら、大手のミュージカル劇団の研究生を経て、舞台デビューすることを目指していました。でも、いざ受験してみたら、ダンス科目であっさり落とされまして。わたし、根っからの運動音痴なんです」

失意に打ちひしがれる、中村さん。そんな折、知り合いを通じて、とあるプロ野球球団サイドからチアリーダーの話が舞い込んできた。もはやダンスがトラウマとなった彼女は、丁重に断ろうとしたのだが……。ふたたび、中村さんの話。

「カンヅメで特訓させるから大丈夫だと、説得されたんです。シーズン開幕の2か月前でした。実際、フタを開けてみたら、まわりはチアリーディング部出身で大会の入賞者ばかり。自宅から片道2時間かけて球場に通い詰めて、マンツーマンで居残り練習が続きました。それでも、成果は上がらず、結局は歌とスマイルふりまき担当。ダンスのときははじっこで存在を消してました(苦笑)」

1年をなんとかしのぎ切ったあとに、球団側からはまさかの継続依頼が届いた。もう1年こなしたが、中村さんは多いときで月16連勤にもなる多忙なスケジュールに体力の限界を感じ、3年目の継続を辞退。とはいえ、おおいに歌って、観客を沸かせる舞台に立つ達成感は忘れがたかった。悶々とする中村さん。そこに、友人から声をかけられた。

「『わたしの入ってる事務所、歌って踊るレースクイーンユニットを運営してるから、紹介するよ』と。それで現在の所属事務所に面接に行ったんです。車はもちろん、レースクイーンの世界は全く未知の領域でした。

いざ、ユニットのオーディションへ参加したときも、質疑応答で『自分を車の部品に例えるとしたら、何ですか』と聞かれて、あまりにも分からないから、『エアバッグ』と答えたんです。理由は、わたしと一緒でふわふわしてるからだと。爆笑されました。そんなレベルだったんです。でも、なぜか合格を頂きました。ありがたいですよね」

採用先は、人気ユニット「フレッシュエンジェルズ」。チアリーダーほど業務はハードでないと踏んでいたが、現実は負けず劣らず、超過密。支えになったのは、ファンの声援だった。

「わたしのファンは“おひな隊”というんですが、チアリーダーの時代から応援してくれた人もいて、ずっと一緒に歩んでくれたんです。ステージから見て感じ取れる熱い視線と笑顔は、本当に励みになりました」

昨年、そして2020年は引き続き「KOBELCO GIRLS」として活動。いまや、レースやスポンサー企業に対する貢献の意識も高い。

「ドライバー、監督、チームの皆さんが本当に温かいんです。とくに監督はレース終了後に今後の課題、反省点をわたしたちにも丁寧に説明して下さいますし。とすれば、こちらとしては俄然、専門知識を学ぼうと、いっそう熱が入る。もともとレースクイーン志望ではなかったけど、今となっては、この仕事を選んで心から幸せに感じてます」

紹介した小嶋さん、星乃さん、そして中村さんの三人は、ふとしたきっかけでレースクイーンの道に進めることができた、幸運なケースだといえる。決して、おいそれと成れるような甘い世界ではない。

しかし、チャンスはどこに転がっているか、わからないのもまた事実。一歩踏み出す勇気が、ときには必要ではなかろうか。

次回は、いよいよラスト。現役のレースクイーンたちをはじめ、関係者が予測する「これからのレースクイーン」について、とことんレポートする予定です。お楽しみに!!

バナー写真提供/GALSPARADISE

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高橋史門

たかはし・しもん●エディター&ライター。1972年、福島県生まれ。日本大学在学中に、「思想の科学」にてコラムを書きはじめる。卒業後、「Boon」(祥伝社)や「relax」、「POPEYE」(マガジンハウス)などでエディター兼スタイリストとして活動。1990年代のヴィンテージブームを手掛ける。2003年より、「週刊プレイボーイ」や「週刊ヤングジャンプ」のグラビア編集、サッカー専門誌のライターに。現在は、編集記者のかたわら、タレントの育成や俳優の仕事も展開中。主な著作に「松井大輔 D-VISIONS」(集英社)、「井関かおりSTYLE BOOK~5年先まで役立つ着まわし~」(エムオンエンタテインメント※企画・プロデュース)などがある。

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