よみタイ

『全裸監督』本橋信宏と『限界風俗嬢』小野一光が教える「相手の心を裸にし、本音を引き出すインタビュー術」

8月5日に、7人の風俗嬢へのインタビューをまとめたノンフィクション『限界風俗嬢』を刊行された小野一光さん。刊行を記念して、Netflixでドラマ化され大ヒット中の『全裸監督 村西とおる伝』の著者・本橋信宏さんをお迎えした豪華対談が実現!
対談後編では、AV女優や風俗嬢、塀の中にいる犯罪者まで、相手の心を裸にし、本音を引き出すインタビュー手法についてお話しいただきました。

(構成/よみタイ編集部、撮影/齋藤晴香)

20年以上にわたる風俗取材から生まれた『限界風俗嬢』が発売中の小野一光さん(左)。『全裸監督』シリーズの原作ほか、さまざまなアウトローたちの人生に迫った著書を持つ本橋信宏さん(右)。
20年以上にわたる風俗取材から生まれた『限界風俗嬢』が発売中の小野一光さん(左)。『全裸監督』シリーズの原作ほか、さまざまなアウトローたちの人生に迫った著書を持つ本橋信宏さん(右)。

まずこちらが裸になってみせる

前編から続く

小野 本橋さんが『ビデオ・ザ・ワールド』で長年やってらしたAV女優のインタビューって、どういう感じで話を聞いていたんですか?

本橋 普通のインタビューですよ。いまだによく「信じられない」って言われるんだけど、私はもともと口下手で。シャイなんですよ。自分に自信が持てないから、人の半生をすごく聞きたい。それで自分と照らし合わせたい。だから、自叙伝とか、人物評伝を読むのも大好きなんです。それと自分の人生をすり合わせたいっていうか。
だから、人の話は、本当によく聞きますよ。聞いていて感心するし。

小野 自分のことを言いたがるインタビュアーって多いじゃないですか。人の話を聞きに来てるのに、自分の主張をしたがっちゃう。

本橋 でも最近私自身にその気があるのよ(笑)。自分でテープ起こししていて「またしゃべってるよ!」って。年のせいなのかね、なんでだろう。

小野 でも、本橋さんの場合、内容が面白いからいいんじゃないですか。
こっちがしゃべる時って、気を遣っている時だったりしません? 相手に、自分はこれこれこうだから、こんなひどいこともあったから、あなたも大丈夫ですよ、何を話しても、って言外に伝えようとしている部分があるなって。

本橋 それはありますね。インタビューの極意の一つとして、こっちがまず全部裸をさらすっていうね。こっちがガードしたり服着てるままだと、向こうも余計に服着ちゃうから。特にこういう風俗嬢のインタビューとか、そうですよね。

小野 こっちが服着たまま、相手を裸にさせようと思っても無理な話じゃないですか。
彼女たち、相手の挙動は必ず見てますしね。ちょっとでも不信感が目の色に表れたりしたらもう話してくれない。

本橋 AV女優のインタビューを始めた頃に付き合ってた女の子がいるんだけど、その子がAVに出た理由をずっと考えていて。それを知りたいがために、毎月、他のいろんな女の子の話を聞いていたんだろうね。
小野さんにはインタビュー術ってあるんですか?

小野 僕は、あんまり聞こうとしないっていう。押さないで引くほうばっかりですね。

本橋 それは、こっちから聞くと相手が警戒しちゃうから?

小野 圧を感じると引いてしまう子が多いんですよね。だから、いかに圧を与えないようにするかっていうのを心掛けるようにはなりました。

本橋 たしかに言えてますね。たまに私もインタビューを受けることがあるんだけど、大学ノート広げてさ、「ん? それで?」て、検事の取り調べみたいにメモ取りながら話を聞く人がいる。これじゃ女の子はしゃべらないよね。

小野 本当はメモ取ったほうが、書き手は後が楽なんですけど、さすがにそれは。事件取材なんかでもそうなんですけど、メモを取ると相手がしゃべりたがらないんで。だから基本的には手には何も持たないようにしてます。

本橋 もちろん録音はするでしょう?

小野 もちろん録りますよ。ただし、どうしても録れない状況の時もあって、そういう時は終わってすぐに書き出すとか、あと、途中でちょっとトイレに立って、トイレの中で書くとか。事件取材は特にそうだけど、あまり取材をウェルカムじゃない人に聞くことが多いので。
相手がいかに話しやすく、話しながら逆に気持ちよくなってくれるか。そういう状況づくりというのは考えてますね。

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新刊紹介

本橋信宏

もとはし・のぶひろ
1956年埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ノンフィクション・小説・エッセイ・評論と幅広い活動を行う。2019年、『全裸監督 村西とおる伝』がNetflixでドラマ化、世界190ヵ国に配信され大ヒットを記録する。『ベストセラー伝説』『東京裏23区』『高田馬場アンダーグラウンド』『新・AV時代 全裸監督後の世界』など著書多数。最新刊は『出禁の男 テリー伊藤伝』。

小野一光

おの・いっこう
1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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