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『全裸監督』本橋信宏と『限界風俗嬢』小野一光が教える「相手の心を裸にし、本音を引き出すインタビュー術」

相手の「嘘」はどう見抜く?

小野 本橋さんは、嘘はどうやって見抜くようにしてます? それこそ、風俗とかAVの女の子って、自分のバックグラウンドに嘘を言ってくる子もいますよね。

本橋 相手が言ったことは、一旦何でも受け入れますよ。でも、盛ってるのかなっていうところは大体、何となくわかりますよね。AV女優の場合は、同席してるマネージャーとアイコンタクト取ったりするからわかりやすい。

小野 事務所の思惑とかで、マネージャーに口止めされてたりするわけですね。

本橋 でも意外と本人のほうから、こういうことになってるけど、実はちょっと違うんだよね、とか言ってくれたりもするよね。女の子自身は誠実な子が多い。

小野 わりと本当のことを言ってくれる子、多いんですけどね。
僕の場合、整合性があるかどうか、他のことと照らし合わせながら聞いているところがあって、そこで嘘をついてるのがわかっちゃったら、どう指摘すればいいんだろうって。相手のプライドが傷つくようなことだったら、こちらが気づいたってことも言うべきじゃないんだろうし。相手にどう伝えるのがいいのか、難しいところだなあと。

本橋 でも、風俗嬢のインタビューだったら、嘘なんてスルーして、できる限り素の部分を探っていく。

小野 犯罪者の場合だったら、色々な周辺取材の内容をぶつけて「●●さんはこう言ってるんだけど、記憶違いじゃない?」とか話を持って行くんですけどね。嘘は指摘した上で、本当のこと話してもらわないと困るから。
じゃあ、本橋さんは女の子の嘘にはノータッチなんですね。

本橋 そのくだりにはあえて触れないで記事を書くかな。私は基本、女性の嘘を見抜くことはできないと思っているから。男性の場合、嘘つくとか、ちょっと盛ってるなっていう場合、視線を外すじゃないですか。女性は逆なんだよ。嘘つく時に相手の目を見るからね。これをされると、「自分に嘘をつくはずがない」と男は騙されちゃう。

小野 そこは性差があるわけですね。

本橋 もちろん例外はあるけど、女性のほうが嘘をつくのも、見抜くのも得意だと思う。
でも、誰でも絶対に嘘をつかない質問ってあるんですよ。私はインタビューで必ず聞くんだけど、「あなたの一番古い記憶は何ですか」って質問。
これを聞くと、結構ちゃらんぽらんに受け答えしてた人も、誠実に思い出そうとしてくれるんですよ。大体、2歳とか3歳で、親と離れ離れになるような、孤独な陰りのある記憶。畑でベビーカーに乗せられて1人でぽつんと待ってたとか、託児所でお母さんが来るのを待ってたとかさ。

小野 なんでそれに関しては真摯に答えるんでしょうかね。現在の自分からは遠く離れてるから話しやすいのかな。

本橋 年齢退行みたいな効果じゃないですか。精神分析とか、クリニックの療法でもあるらしいんですよね。過去の自分をずっと遡っていくと、結構ピュアな、寂しくて孤独な体験を思い出すみたいで、あと、色を思い出したりもするみたい。AV女優のインタビューで、3歳くらいで赤いスカートを穿いて、ディズニーランドに行った記憶を話してくれた子がいたな。両親が離婚することになって、最後に3人で出かけた時の記憶。

小野 そうやって過去の自分を引っ張り出してくることで、正直に答えるモードになるということなんでしょうね。
僕が女の子の話を聞くときには、「相手の生活圏内にいない存在」っていうふうな形を、できるだけ取るようにしてて。あなたの生活圏内にいないから何をしゃべっても大丈夫ですよって思ってもらおうとしてるんですね。現在の相手に関する質問、たとえばどこに住んでいるのかとかを深く聞かないようにしてます。女の子って、そういう安心感があって初めてしゃべってくれるから。

風俗取材と事件取材、どちらが大変?

本橋 小野さんは風俗嬢取材も長いけど、事件ものもやってるじゃないですか。どっちが大変ですか。それぞれ種類が違う大変さだと思うけど。

小野 全然違いますね。でも全然違うんだけど一緒。犯罪者にも地雷ワードがあるんですよ。一言でもう会ってくれなくなるっていうのがあるので。
犯罪者って、捕まってるから拘置所の面会室で会うじゃないですか。テレクラと同じで、向こうが嫌になったらもうそれ以降、一切会えなくなるわけで。

本橋 テレクラ。たとえがうまいな。ガチャ切りされるわけね。

小野 それで、会ってもらえない理由も聞けないじゃないですか、相手に。そういう形でこれまで、ある日突然遮断されてっていうことが何度もあるので。
なんでだろう、何がいけなかったんだろうって考えるんですけど、わかる時とわからない時があるんですよね。
そういう点で言うと、犯罪者も風俗嬢の取材も両方とも、言っちゃいけないことというか、相手が言われたくないことがどこかに存在していて、それに触れてしまったら全部閉ざされるというのは共通してるのかなと思います。

本橋 アクリル越しのインタビューっていうのは大変ですよね、時間も限られてるし。

小野 会ってもらえるよう手紙を書いたりはできますけど、一度断られるようになって、向こうが翻意することはほぼないんですよね。

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本橋信宏

もとはし・のぶひろ
1956年埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ノンフィクション・小説・エッセイ・評論と幅広い活動を行う。2019年、『全裸監督 村西とおる伝』がNetflixでドラマ化、世界190ヵ国に配信され大ヒットを記録する。『ベストセラー伝説』『東京裏23区』『高田馬場アンダーグラウンド』『新・AV時代 全裸監督後の世界』など著書多数。最新刊は『出禁の男 テリー伊藤伝』。

小野一光

おの・いっこう
1966年、福岡県北九州市生まれ。雑誌編集者、雑誌記者を経てフリーに。「戦場から風俗まで」をテーマに、国際紛争、殺人事件、風俗嬢インタビューなどを中心とした取材を行う。
著書に『灼熱のイラク戦場日記』『風俗ライター、戦場へ行く』『新版 家族喰い——尼崎連続変死事件の真相』『震災風俗嬢』『全告白 後妻業の女』『人殺しの論理』『連続殺人犯』などがある。

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