よみタイ

手塚治虫文化賞受賞作 『妻が口をきいてくれません』作者・野原広子さんが考える「幸せな夫婦」とは

野原広子さんが、すれ違う夫婦の姿をリアルに描いた『妻が口をきいてくれません』。
「よみタイ」連載時にも賛否両論、反響続々、描き下ろしを加えて昨年11月に発売された単行本は、たちまち大幅増刷!
テレビなど、メディアでも多数取り上げられ話題となっています。

夫婦の問題を深く掘り下げる“問題作”として注目を集める本作と『消えたママ友』(KADOKAWA)が、この度、手塚治虫文化賞・短編賞を受賞しました!!
受賞を記念して、前編では、作者の野原広子さんに、受賞の喜びや制作秘話を語っていただきました。
続く後半では、これまで取材を通して様々な夫婦に出会ってきた野原さんに、夫婦観や円満な関係を築く秘訣についてうかがいました。

(聞き手・構成/よみタイ編集部)

無視の暴力性に美咲は気づいていない

前編から続く)

――「よみタイ」配信直後から賛否両論渦巻く話題作となった本作。SNSなどに寄せられた賛否の声の「否」には、「口をきかない」という妻・美咲の手段には共感できない、無視では解決にならないとの声がありました。それについてはどう思われますか。

美咲の無視は暴力なのかもしれませんね。でも、美咲はそうは気がついていないんです。
無視や言葉の暴力を相手にしていても、それが暴力だと気がついていない人も多いと思います。目に見える暴力だけが暴力じゃない。
逆の立場になって、相手に無視され続けることを想像したら本当に辛いことだと気がつくわけです。
美咲を見てそれに気がついてくれたらいいですね。

無視は美咲にとって無言の攻撃でもある。
無視は美咲にとって無言の攻撃でもある。

――直木賞作家の佐藤賢一さんや講談師の神田伯山さんら、著名人からも感想や分析コメントが寄せられました。特に印象的だった指摘などはありますか。

とてもすごい方々から分析やコメントをいただきましてありがとうございました。
皆さまに色々な角度から「妻口」を読み解いていただきまして、描き手ながら初めて知ることや気づくことが多かったです。

その中でも直木賞作家の佐藤賢一さんからの「既婚男性なら、ほぼ百パーセント覚えがあるはずです」という文章に驚きを隠せませんでした。
私は女性なのでどうしても女性の言葉を聞くことが多いので、夫の立場から文章を寄せていただいた方々の心内に改めてハッとさせられました。
佐藤賢一さんもそうですが、神田伯山さん江口寿史先生、皆さま、その世界ですごい方々なのですが「妻口」に寄せていただいた文の中では、そこには夫としての姿があり、そして、その姿はとても静かに目の前に浮かびました。
大先生でありながら、妻の前では夫なわけでして。とても丁寧に“奥様がいて夫としている”ご自身のことを書いていただいたのを感じました。

また、酒井順子さんに寄せていただいた文章の中では子供時代の酒井さんからの視点を描いていただきまして、とてもヒリリと心に刺さりました。
多くの方に文章を寄せていただいて心より御礼申し上げます。

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野原広子

のはら・ひろこ●イラストレーター。作品に『離婚してもいいですか?』『離婚してもいいですか? 翔子の場合』『ママ友がこわい 子どもが同学年という小さな絶望』『娘が学校に行きません 親子で迷った198日間』『ママ、今日からパートに出ます! 15年ぶりの再就職コミックエッセイ』『消えたママ友』『赤い隣人』(以上すべてKADOKAWA)『お仕事はじめました!』(主婦と生活社)『人生最大の失敗』(オーバーラップ)『今朝もあの子の夢を見た』などがある。
2021年『妻が口をきいてくれません』『消えたママ友』2作により、第25回手塚治虫文化賞「短編賞」受賞。

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