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「夫婦のバイブルです」 直木賞作家・佐藤賢一さんが読む『妻が口をきいてくれません』

「よみタイ」の連載で累計3000万PVを超えたコミック『妻が口をきいてくれません』。
すれ違う夫婦の姿をリアルに描き、SNSなどでも賛否両論渦巻く大反響を呼びました(第1話はこちら)。
書き下ろしを加えて11月26日に発売された単行本は、たちまち大増刷が決定!

そんな、今もっとも注目を集める夫婦コミックを、直木賞受賞作『王妃の離婚』などで知られ、このほど『ナポレオン』で司馬遼太郎賞を受賞した作家の佐藤賢一さんに読んでいただきました。
多忙な作家であり、家庭では夫であり、二子の父でもある佐藤さんの感想は……。

(構成/「よみタイ」編集部)

もう夫婦のバイブルです

 タイトルに、いきなりドキッとさせられました。

「妻が口をきいてくれません」

 そう言葉が並んだ瞬間から、心にイヤな重さが忍び入るのです。妻が口をきいてくれない。何を聞いても、返事がない。ようやくラインが来たかと思えば、とってつけたような敬語で、ひたすらに事務連絡。よみがえる記憶の数々に、にわかに息が苦しくなって……。
 
 恐らくは私だけではありません。既婚男性なら、ほぼ百パーセント覚えがあるはずです。だから、もう、作中の誠が他人とは思われない。

単行本『妻が口をきいてくれません』より。
単行本『妻が口をきいてくれません』より。

 いや、それは夫が悪いんです。思いやりがない。無理解にも程がある。いつも自分のことばっかり。エゴイスト。サイコパス。このB型。仰る通りなんですが、でもね。夫だって楽じゃないんです。仕事、つらいんです。というのも、子供なんか生まれると、がんばらなきゃと無駄に張りきるわけです。家なんかも建てて、ローンの返済が始まると、俺が倒れたらお終いだなんて、妙な責任も感じてしまう。だから、逃げない、逃げられない。

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佐藤賢一

1968年山形県鶴岡市生まれ。山形大学教育学部卒業。東北大学大学院文学研究科フランス文学専攻博士課程単位取得満期退学。
1993年『ジャガーになった男』で第6回小説すばる新人賞受賞。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞受賞。2014年『小説フランス革命』(集英社)で第68回毎日出版文化賞特別賞受賞。2020年『ナポレオン』(集英社)で第24回司馬遼太郎賞受賞。主にヨーロッパ史を題材とした歴史小説を多く手掛けているが、近年は日本、アメリカを舞台とした作品も発表し舞台化されたりなど話題となる。日本語のみならず、フランス語などの外国語文献にもあたり蓄積した膨大な歴史的知識がベースの小説、ノンフィクションともに評価が高い。
著書に下記などがある。
<小説>
『傭兵ピエール』『双頭の鷲』『カルチェ・ラタン』『オクシタニア』『黒い悪魔』『褐色の文豪』『ハンニバル戦争』『ナポレオン』『女信長』『新徴組』『日蓮』『最終飛行』ほか。
<ノンフィクション>
『英仏百年戦争』『カペー朝』『テンプル騎士団』『ドゥ・ゴール』『ブルボン朝』ほか。
<漫画原作>
『傭兵ピエール』『かの名はポンパドール』

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