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FBI捜査官に“スカウト”された日本人ジャーナリストが明かす、日本では絶対にできない「相手の懐」への入り方

日本人だけとつるまない

駐在員や特派員は、一定の期間会社の費用で海外を拠点にして仕事をする。

私の場合20年近くアメリカに住んでいたが、すべて自費である。仕事がなければ収入はない。駐在員や特派員は毎月一定の収入があり、海外にいることで他にもいろいろな手当がつくが、私の場合そういう手当は一切ない。

私がよく目にしたのは、例えばマンハッタンで行われた記者会見が終わると、特派員たちが集まって、得た情報を確認し合っている様子である。日本人同士が集まる光景だ。

彼らがどれほど現地のアメリカ人と交流しているか知らないが、私の場合、ニューヨーク市警の警察、現役FBI捜査員、現地のアメリカ人記者などできるだけアメリカ人と交流するようにしていた。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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アメリカ人記者が集まるカジュアルなイベントにも頻繁に参加していた。それはアメリカ人の感覚をできるだけ身につけるためと人脈を広げるためである。

当時はネットが今ほど使われていなかったので、そういう集まりこそ貴重であった。

1995年のO・J・シンプソンの刑事裁判で無罪判決が出たときも、そういう会に参加すると、みんなビールを片手に活発に議論していた。

それぞれの記者が持っている情報は重なる部分はあるが、異なる部分も多かったので積極的に参加した。そこから次の取材につながる場合もあるからだ。

アメリカには、日本の「記者クラブ」に直接対応するような、特定のメディアだけがアクセスできる公式な「囲い込み記者クラブ」はない。日本の「記者クラブ」はその閉鎖性を欧米のメディアによく批判されている。

現地の警察と昵懇になると、普通は入れないところにも案内してくれた。パトカーにも乗せてくれ、拘置所にも案内してくれた。逮捕されたばかりの人が詰められている拘置所である。

当時、それを目の当たりにしたとき、「逮捕」というよりは「捕獲」という言葉が当てはまるほど、ギューギュー詰めにされ、人間扱いされていなかった。

NY市警から発行されるPress IDを持っていたが、それを見せると普通なら金属探知機を通さないと中に入れない法廷でも横から入れてくれた。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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相手の懐に入ると、取材なら答えてくれそうにないことを教えてくれる。つまり、本音である。

例えばアメリカには死刑制度がある州は27州あるが、ニューヨーク州にはない。日本の警察なら銃を使わない状況でもアメリカでは簡単に使う。黒人に対して特に使うことはニュースなどでもよく知られている。

私がスピード違反でつかまっても違反チケットを切られることはないが、黒人がつかまると銃を黒人に向けながら近づく。もしその黒人が逃げようとすると警察は迷わず銃を発射する。日本では考えられないが、アメリカではよく見られる光景である。

以前、親しいNY市警の警察官に「なぜ黒人の場合射殺することが多いのか」と聞いたことがあるが、「死刑がないから、射殺する」と言っていた。

すべての警察官が同じ考えを持っているとは思わないが、彼自身は他の多くの同僚もそう考えていると言っていた。警察の免責(police immunity)があるから、よほどのことがない限り免責になる。これは警察官が職務中に行った行為について、一定の条件下で法的責任を免れるという法的な保護である。

Black Lives Matter(BLM)運動のきっかけとなった2012年のトレイボン・マーティン事件では、射殺した白人・ヒスパニック系の自警団員ジョージ・ジマーマンは正当防衛を主張し、2013年に無罪判決を受けているが、2020年5月25日にアメリカ・ミネソタ州ミネアポリスで発生した、ジョージ・フロイド事件では、白人の警察官デレク・ショーヴィンは有罪判決を受けた。

彼はフロイドの首を膝で約9分間強く押さえ続け、その間フロイドは「息ができない(I can’t breathe)」と何度も訴えたが、助けられることなく死亡した。

ミネソタ州ミネアポリス(写真/Shutterstock)
ミネソタ州ミネアポリス(写真/Shutterstock)

ショーヴィンは殺人罪で逮捕・起訴され、2021年に第2級殺人罪で有罪判決(禁錮22年6カ月)を受けた。現場の動画が通行人によって撮影・公開され、全米にBLM運動が広がったが、動画がなければ、“正当防衛”を主張したかもしれない。

黒人に対する差別は根深いものがある。メディアの報道だけをみているとその根深さを実感するのは難しいが、親しい警察であれば本音を教えてくれる。

この本音を知ることは、アメリカ人の肌感覚を知るという点で、すこぶる重要だ。

そういう意味で、特に駐在員や特派員は、そのチャンスを最大限生かし、できるだけ現地の人と交流し、現地の文化に同化(assimilation)して、思い切り溶け込むべきである。

日本では絶対にできないのだから。

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大野和基

おおの・かずもと/国際ジャーナリスト。

1955年生まれ、兵庫県西宮市出身。大阪府立北野高校卒。
東京外国語大英米学科卒業後、1979年に渡米。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学んだ後、ジャーナリストの道に進む。
​以来、国際情勢の裏側や医療問題に関するリポートを発表するとともに、世界的な要人・渦中の人物への単独インタビューを次々とものにしてきた。芸能ゴシップから国際政治経済モノまで、すべてを等距離に置くことをモットーとする。
3カ月で10万部のベストセラー『コロナ後の世界』(ジャレド・ダイアモンドほか、文春新書)、『民主主義の危機』(イアン・ブレマーほか、朝日新書)などの訳書、『つながりすぎた世界の先に』(マルクス・ガブリエル)、『お金の流れで読む 日本と世界の未来』(ジム・ロジャーズ、ともにPHP新書)、『オードリー・タンが語るデジタル民主主義』 (NHK出版新書)などインタビュー・編著多数。
著書に『私の半分はどこから来たのか』(朝日新聞出版)、『日本人だけが知らない世界基準の「質問力」』 (祥伝社)などがある。
公式HP■https://www.kaz-ohno.com/

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