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食費だけで14万! 準備万端で挑んだはずの「サハラ砂漠1000kmレース」で待ち受けていた最悪のトラブル

「アドベンチャーマラソン」――
砂漠、荒野、山岳、氷雪、ジャングル……世界の極地を舞台にし、寝袋や食料などを背負いながら、数日間かけ数百キロの道程を走り、タイムを競うレースで、“世界でもっとも過酷”といわれています。

そんな過酷なレースに、日本唯一のプロアドベンチャーランナーとして挑み続けているのが、北田雄夫さん。
現在好評発売中の書籍『地球のはしからはしまで走って考えたこと』!は、北田さんが日本人として初めて世界7大陸を走破するまでや、その後、4大極地最高峰レース(※)に挑戦する様子を詳細に記録した、初の著書。

昨年はコロナの影響で挑戦予定のレースが中止・延期になりましたが、今年はいよいよ挑戦再開! 2月末からアラスカで開催される、「アイディタロッド・トレイル・インビテーショナル」の560キロ部門に参加予定です。そこで今回は、北田さんの新たなチャレンジを応援すべく、本の中から、4大極地最高峰レースのひとつ、2019年に走破したサハラ砂漠1000キロの「La 1000(ラ・ワンサウザンド)」への挑戦(単行本の7章)を、3回に分けてお届けします。

前回は「サハラ砂漠対策・人体実験」編でした。今回はその続き、「レーズ前半・トラブル続出」編です!

※世界4大極地の最高峰レース走破とは?
地球上で人間が走れる4つの極地「暑い砂漠、寒い氷雪地、衛生環境の悪いジャングル、標高の高い山岳」で開催される最高峰レースをすべて走破すること。

●オーストラリアの荒野521キロを走り抜く「The Track(ザ・トラック)」への挑戦編 全3回はこちら→「準備編」「レース前半戦」「レース後半戦」

※書籍から一部抜粋・再編集しています。
(構成/よみタイ編集部)
2019年、サハラ砂漠1000キロの「La 1000(ラ・ワンサウザンド)」へ挑戦した北田雄夫さん。
2019年、サハラ砂漠1000キロの「La 1000(ラ・ワンサウザンド)」へ挑戦した北田雄夫さん。

遭難回避の必需品「GPS時計」が使えない!?

(前回より続く)

 「ラ・ワンサウザンド」ではコースを示すフラッグなどの目印がない。コース上にスタッフはいない。もちろん道もない。

 そこで砂漠の中のおよそ20キロごとに設置されたチェックポイントを取り込んだGPS時計を準備する必要があった。準備段階でアランに聞くと、参加者全員が「ガーミン」のものを使用するという。この時計に地図表示はなく、登録したポイントへの方角と直線ルートだけがシンプルに表示されるので、天候や体調不良の状況で道に迷ったとしても、ディスプレイを確認すればすぐに方向を修正できる。米軍特殊部隊で使用されているGPSモニターや高感度GPSチップがついているので砂漠の中でも耐久性が信頼でき、さらに乾電池使用なので、充電せずともドロップバッグごとに電池を交換すれば済み、最適ということだった。
 ただし日本語表示や説明書のない商品だったので、設定やチェックポイントの取り込みをミスしていたらレースどころではなくなる。アランが購入から準備まで一切の準備をしても良いということだったので、僕はすべてを彼に任せて依頼していた。そして、そのGPS時計を受け渡された。

「乾電池はちゃんと持ってきたか?」
「え? 持ってきていない。だってあなたにお願いしていたから」

 たどたどしい英語で説明すると、みんながざわつく。
 このGPS時計は単4の乾電池2本でのみ動き、使用可能時間は約17時間。レース日程の18日間使うことを想定すると、50本も必要となる。だが、ここでは電池が入手できないとのこと。GPS時計がないと、砂漠で遭難必至。レースに参加できない。思わぬハプニングに脇汗をビッショリとかく。

「ずっと誰かと一緒に走ったら?」
「GPSを使うのは1時間おきでいいんじゃないか?」

 他の選手は冗談まじりの会話をする。僕は必死で抗議する。マレックが間に入って、危機的状況を真剣に説明してくれ、アランや他の選手たちから余っている電池をかき集めることになり、なんとかほぼ18日分に相当する48本が集まった。これで遭難せずにレースができる。

 なんとかなったものの僕の準備が甘かったせいだ。

 ドロップバッグや予備アイテムを含め、のべ150種以上のアイテムをレース数ヶ月前から準備とチェックをしてきたのだが、段ボール箱20個を超える物量を管理する難しさを理解していなかった。4畳半の僕の部屋が段ボール箱で埋め尽くされると、頭が考えることを拒否してしまったのだ。
 さらに僕の「なんとかなる」性格が裏目にでて、肝心の電池は準備されていなかった。今後はこの規模のレースになると、どこかに準備専用の部屋を借りて、第三者チェックをしてもらう必要があるな、と感じていた。

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北田雄夫

きただ・たかお
1984年生まれ、大阪府堺市出身。中学から陸上を始め、近畿大学3年時に4×400メートルリレーで日本選手権3位。
就職後は一度、競技から離れるも「自分の可能性に挑戦したい!」と再び競技を始める。
2014年、30歳からアドベンチャーマラソンに参戦。
17年、日本人として初めて「世界7大陸アドベンチャーマラソン走破」を達成。
現在は「世界4大極地の最高峰レース走破」にチャレンジ中。

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