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絶対にマネしてはいけない! サハラ砂漠1000kmマラソンに挑む男が試みた壮絶な「人体実験」

力強いパートナーとの出会い

 もちろん、走るトレーニングも積んでいった。

 ピレネー山脈横断で痛めた足底筋膜炎そくていきんまくえんは、シューズやインソールを調整したり、整骨院に通ったり、マッサージをするなどあらゆることを試した。だが一向に痛みは引かず、完治にはほど遠く痛みと付き合いながら走らざるを得ない状況だった。そんな中でも長い距離を走っておきたくて、4月末からのゴールデンウィークには新潟から滋賀までの400キロを走ることにした。

 僕はレースに臨むトレーニングとして時々、数百キロを超えるロング走をしている。2015年から取り入れ始めたが、これにより長く走る筋力はもちろん、長距離を走ることで起こる足のトラブルや課題がわかり、それに対処するスキルや知恵が身についていった。
 そしてせっかく長い時間をランニングするなら、好きな歴史にも触れようと思い、2015年に初めて高野街道50キロを走って以来、「歴史街道ラン」がマイブームとなった。
 東海道500キロ、中山道530キロ、甲州街道210キロ、熊野古道650キロ、伊勢本街道170キロ、出雲街道260キロ――日本の歴史と文化に触れ、食や風景と出会い、地域の人との交流もある。そんな素敵なランニングの楽しみ方を広げ、また世界中のランナーに日本の素晴らしさを広く知ってもらいたい。その思いから、まずは自分が走っている。

 今回は、新潟県上越市から滋賀県草津市までの北陸道(北国街道) を選んだ。
 いつもならひとりで走っているのだが、実は今回はひとりではない。2018年に出会い、付き合っている彼女と一緒に走るのだ。
 僕がアドベンチャーマラソンに没頭しているタイミングで出会ったのだが、極地に旅立つ僕をよく理解してくれたなとつくづく思う。
 彼女は家でじっとするより、いつも出歩きたいアクティブな性格で、趣味が旅行とロードバイク。そんな女性なので、「じゃ一緒に400キロ走る?」と僕がなにげなく聞いてみると、「行くー!」となんとも軽い返事が返ってきたのだ。そうして僕はランニング、彼女はロードバイクで走るという、ひとつのトレーニングの形ができた。

 事前に宿を探して予約してくれ、400キロもの間ずっとランニングのペースに合わせて進んでくれた。道中は日本海の厳しい嵐にあい、季節外れの寒さで凍えそうにもなり、道が荒れている峠はロードバイクを担いで越えたのだが、人生でトップ3に入るほどの楽しい旅だったそうだ。
 彼女もまた僕と同じ変わり者だとわかった。

 前例のない挑戦のたびに僕は不安になる。それでも、いつも変わらず応援してくれる彼女のおかげで不安より安心が少しだけ大きくなり、毎回のレースに挑むことができている。今ではマッサージや動画撮影までもしてくれている。とても大きな支えとなっている彼女に感謝している。

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新刊紹介

北田雄夫

きただ・たかお
1984年生まれ、大阪府堺市出身。中学から陸上を始め、近畿大学3年時に4×400メートルリレーで日本選手権3位。
就職後は一度、競技から離れるも「自分の可能性に挑戦したい!」と再び競技を始める。
2014年、30歳からアドベンチャーマラソンに参戦。
17年、日本人として初めて「世界7大陸アドベンチャーマラソン走破」を達成。
現在は「世界4大極地の最高峰レース走破」にチャレンジ中。

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