2021.1.17
絶対にマネしてはいけない! サハラ砂漠1000kmマラソンに挑む男が試みた壮絶な「人体実験」
砂漠、荒野、山岳、氷雪、ジャングル……世界の極地を舞台にし、寝袋や食料などを背負いながら、数日間かけ数百キロの道程を走り、タイムを競うレースで、“世界でもっとも過酷”といわれています。
そんな過酷なレースに、日本唯一のプロアドベンチャーランナーとして挑み続けているのが、北田雄夫さん。
現在好評発売中の書籍『地球のはしからはしまで走って考えたこと』!は、北田さんが日本人として初めて世界7大陸を走破するまでや、その後、4大極地最高峰レース(※)に挑戦する様子を詳細に記録した、初の著書。
昨年はコロナの影響で挑戦予定のレースが中止・延期になりましたが、今年はいよいよ挑戦再開! 2月末からアラスカで開催される、「アイディタロッド・トレイル・インビテーショナル」の560キロ部門に参加予定です。そこで今回は、北田さんの新たなチャレンジを応援すべく、本の中から、4大極地最高峰レースのひとつ、2019年に走破したサハラ砂漠1000キロの「La 1000(ラ・ワンサウザンド)」への挑戦(単行本の7章)を、3回に分けてお届けします。
今回は第1回「サハラ砂漠対策・北田さん流の人体実験」編です。
※世界4大極地の最高峰レース走破とは?
地球上で人間が走れる4つの極地「暑い砂漠、寒い氷雪地、衛生環境の悪いジャングル、標高の高い山岳」で開催される中で北田さんがセレクトした最高峰レースをすべて走破すること。
●オーストラリアの荒野521キロを走り抜く「The Track(ザ・トラック)」への挑戦編 全3回はこちら→「準備編」、「レース前半戦」、「レース後半戦」
※書籍から一部抜粋・再編集しています。
(構成/よみタイ編集部)
ジャングルに砂漠、最高峰レースへの挑戦スタート
2019年、4大極地最高峰レースへの挑戦が本格的に始まった。
まずは2月。極寒の氷雪地レース「アイディタロッド・トレイル・インビテーショナル」の240キロ部門に挑んだ。
昼夜問わず進み続けるノンストップレースで、240キロ、560キロ、1600キロの3部門に分かれており、240キロからひとつひとつクリアしていかないと、目標としている最長の1600キロへと進めないルールになっている。そのため、のべ3年をかけて挑むことになる。
舞台は厳冬期のアラスカ。最低気温はマイナス40℃になることもあるそうだが、今大会は快晴が続き最低気温マイナス30℃止まりの中、76時間47分、参加9名中4位でゴールした。
犬ぞり北極探検家である山崎哲秀さんや、シューズや寝袋やゴーグルなど各装備メーカーにも相談しながら準備を進めたおかげで無事に完走できたものの、一歩間違えば凍傷による生命の危機を感じる、これまでとは次元の違う自然環境の厳しさを知った。
6月。いよいよ4大極地最高峰レースの最初となる、南米ペルーのアマゾン地帯で行われた5ステージ230キロの「ジャングル・ウルトラ」に挑戦した。
どんな危険な生き物がいるのかとビクビクしながら、底の見えない川を腰まで浸かりながら渡ったり、見るからにヤバイ真っ赤なヘビに遭遇したり、四方八方を蟻や蜘蛛や蚊に囲まれたりもしたが、無事に大きなトラブルなく完走することができた。
アフリカで感染症にかかった時の学びから、素肌の露出を減らして虫除けスプレーを使うという基本的な対策をしっかりしたおかげだ。レース中の夜はジャングルの一角で、選手各自が持参したハンモックで寝るのだが、いざやってみると案外心地よく眠れるものだ。
結果は36時間28分53秒、参加51名中6位でゴールした。地球の様々な大自然に揉まれながら僕は少しずつだが確実に強くなっていることを実感できた。
そして11月。砂漠の「最高峰レース」に挑む。その名も「ラ・ワンサウザンド」。
サハラ砂漠を1000キロ走るノンストップレースだ。開催地はアフリカ北西部にあるイスラム教国のモーリタニア。国土の90%以上が砂漠で人口は約430万人。元フランスの植民地だったことからフランス語が広く使われている。主食は米やパン、スパゲッティ、クスクスなどで、モーリタニア産のタコは日本流通量の約30%を占めているとのこと。
そう聞いてそれまでは全く知らない国が一気に身近に感じられた。タコに感謝だ。
気温差は10〜45℃、制限時間は18日間。
シンゲッティという街を起点にサハラ砂漠を反時計まわりに1周するコースで、約20キロごとに食事、ドリンク、寝床が提供されるチェックポイントがあり、偶数のチェックポイント、つまり約40キロごとに、自分の荷物を置いておくドロップバッグも活用できる。ただサハラ砂漠には当然道も目印もない。GPS時計で方角・距離などルートを確認しながらレースは進む。
今回が初開催であり参加者は世界から18名。日本人は僕だけ。だからもちろん日本人初挑戦だ。