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坂本勇人の「やんちゃな兄ちゃん感」は、今後いつまで続くのだろう〜坂本勇人(プロ野球選手)

だから坂本の成し遂げた「高卒2年目で全試合スタメン」「高卒3年目で打率3割」「高卒4年目で31本塁打」などの数々の記録も、負担が大きいショートの守備も、軽々とやってのけているようなイメージを抱いてしまう。たまに報じられる週刊誌報道なども、「やんちゃな兄ちゃん」のイメージに拍車をかけるものとなっている。

しかし、坂本はそのようなイメージ通りの人なのだろうか。巨人という球団は、ただでさえ注目度が高く、伝統が重視されるチームでもある。4番打者に「第〇代」という数字が冠されるのも巨人だけだ(ちなみに坂本は第82代)。こうしたチームで19歳の時からレギュラーを守り続けるのは、並大抵の重圧ではなかっただろう。

また坂本は、阿部慎之助の後を受けて26歳で巨人のキャプテンに就任した。帽子からピョイと覗いていた坂本の後ろ髪が消えたのもこの頃である。それは、キャプテンとしてのけじめであったのかも知れない。しかし坂本がキャプテンとなった2015年以降、巨人は4年連続で優勝を逃した。他球団のファンですら、事あるごとに坂本の「僕がキャプテンになってから優勝できていない」という言葉が報じられるのを目にした。

坂本にも色々な苦労はあるのだが、それが顔に出るかというと

31歳での2000本安打達成ということは、一軍デビューが早いばかりでなく、故障による長期離脱が少ないということの証でもある。坂本は2018年に脇腹痛で1か月ほど戦列を離れたほかは、大きなケガには見舞われていない。おそらくは体のケアにも相当気を配っているのだろう。
ところが今シーズンは、1月にインフルエンザB型、2月にA型と立て続けに罹患し、開幕直前の6月にはチームメイトの大城卓三とともに新型コロナ「微陽性」と診断されるなど、アクシデントが相次いだ。色々と苦労があったのだ。

また、坂本は昨年移籍してきた丸佳浩や炭谷銀仁朗、中島宏之らに対してチームに溶け込みやすい雰囲気を作ったり(スポニチアネックス・2019年9月22日)、20歳の頃から東京ドーム主催試合に「赤十字シート」を設けて闘病中の子どもや児童養護施設の子どもを招待してきたりした。周囲に対する気配りも欠かさない人物なのだ。

この世に「苦労が顔に出やすい人」と「そうでもない人」がいるとするならば、坂本は間違いなく後者である。ただ、それが坂本の強みなのかもしれないと思う。今後坂本が軽やかに3000本安打を達成していく姿を、他球団ファンながら見守っていきたいと思う。

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オギリマサホ

1976年東京都出身。イラストレーターとしてシュールな人物画を中心に雑誌や書籍などで活躍。中学1年までは巨人ファンだったのが、中2のときに投手王国・広島カープに魅せられ、広島ファンに転向。そのカープ愛が炸裂するイラストエッセイ『斜め下からカープ論』を刊行。野球のみならず、広くスポーツ界を愛している。
Twitter@ogirim

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